中華料理の定番メニュー「春巻」。誰もが知っているけれど、意外と家では作らない。みんな大好きなのに、なぜか食卓に登場する機会は少ない…。そんな春巻をこよなく愛し、魅力を伝えているのが「春巻百珍(@harumakihyakuchin)」というInstagramアカウントが人気の山本亜由美さんです。
そこで今回、山本さんに春巻の「新しい世界」を見せてもらうことに!お気に入りから意外な組み合わせレシピ、手軽に巻くコツまで。山本さん流・カンタンおいしい春巻の世界をご案内します。
インタビューした人
山本 亜由美さん
アクセサリー作家。趣味で作る料理やキッチンが話題になり、テレビや雑誌などのメディアに出演。とくに春巻だけを掲載したインスタグラム「春巻百珍(@harumakihyakuchin)」が人気を呼び、その腕前は料理研究家も絶賛するほど。
- 自由な発想が生む、新しい春巻
- シンプルこそ贅沢。具材1つの「○○だけ」春巻
- 身近な食材で作る、意外な組み合わせの春巻
- 春巻の可能性は無限大!広がる新たな楽しみ方
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自由な発想が生む、新しい春巻
元々春巻が好きだったという山本さん。目覚めたきっかけは、テレビ番組だったのだそう。
山本さん「高校生の頃、料理番組で鶏のささみと長ネギだけの春巻を見たんです。母と一緒に作ってみたら、春巻の自由さにすっかりはまってしまいました。それまでは、わが家も五目春巻が定番だったのですが、あんを作る必要がないと気づいてから、食卓に出る機会が一気に増えました」
山本さん「自由度が高いから普段の料理にも、おもてなし料理にもなる。そこがすごく好きなんです。家にあるお総菜を巻くだけで、まるでお化粧したみたいにかわいくなるじゃないですか」
山本さんは元々料理好きで、家に人を呼んでもてなすことも。そんな時に作っていた春巻が話題となり、今では「山本さんの春巻が食べたい!」と料理研究家などとのグルメなつながりも生まれているのだとか。春巻好きが高じ、春巻だけを載せたアカウント「春巻百珍」を2022年の春に開設しました。
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シンプルこそ贅沢。具材1つの「○○だけ」春巻
そんな山本さんの定番は、1つの具材で作る「○○だけ」の春巻。
山本さん「季節によって変わるのですが、春は菜の花だけ、夏はそら豆だけ……など、素材をひとつに絞った春巻をたっぷり作って楽しみます。なすだけ、ズッキーニだけ、ほうれん草だけ、オリーブだけといった春巻も、よく作りますね。ほうれん草は汁気が多いので、ゆでたものを使用するか、おひたしの余りを巻くのもオススメです」
なかでも一番のお気に入りで、山本さんがもっともよく作るというのが、えび「だけ」の春巻。ここからは、山本さん流の巻き方から揚げ方までご紹介します。
●えび「だけ」春巻の作り方
使うのは、むき身にしたえび(バナメイえびや芝えびがオススメ)、しょうがの千切り、調味料だけ!えびは殻をむき、背わたを外したら、よく洗ってキッチンペーパーなどで水気をしっかり取ってから包丁でたたきましょう。ボウルにえびとしょうが、油(太白ごま油などのクセのない油がオススメ)、酒、塩、白こしょうを入れて混ぜ合わせれば、具のできあがり。
山本さん「今日はしょうがを加えましたが、刻んだセロリやパクチーなどの香味野菜に替えてもおいしいですよ。あまりに頻繁に作るので、えびは安いときにまとめて下処理し、冷凍しています」
<基本の巻き方>
具ができたら、春巻きの皮を1枚ずつにはがし、巻いていきます。
- スプーン1杯より少し多めの具材を、皮の端に置きます。
- 具を巻き込むようにして、ひと巻きします。
- 具を中心とし、左右の皮を折りたたみます。
- 下から上に向かって、くるくると巻いていきます。最後に皮の端に水をつけ、巻き終わりを閉じるように貼り合わせます(今回使用しているような薄い皮の場合は、水だけで十分くっつきます)。
ワンポイントとして、最初にひと巻きした後、空気を抜くようにギュッと巻き込むことでえびの密度が高まり、山本さん好みの「みっちりした」春巻になります。また、折りたたむ前に包んだ具の両端をギュッと押すと、きれいに巻けて中身が漏れにくくなる効果が。
山本さん「春巻は蒸し料理でもあるんです。上手に巻くコツは『具材の水気をきること』と『具材を入れすぎないこと』。隙間なくしっかり巻くことで、中で具材が蒸され、おいしさが引き出されます」
<揚げ方>
いよいよ、春巻を揚げていきます。山本さんがよく使用するのは米油で、サラダ油でも代用可能とのこと。
山本さん「具材が中華系の味付けのときは、香り付け程度に全体量の1割だけごま油を使うこともあります」
山本さん「油の量は春巻の七分目が隠れるくらい、温度は180度を目安にしましょう。揚げ時間は春巻の色を見ながら、きつね色になったら食べ頃の合図です。一気に火を通すことで皮が固まるので、箸でひっくり返しても汁漏れしてしまう心配がなく、よりきれいに仕上がります」
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身近な食材で作る、意外な組み合わせの春巻
山本さんの春巻のモットーは「自由」。お話し中も、次から次へと具材のアイデアが湧いてきます。
山本さん「中身をどうするか考えているというよりは、あるものから作ることが多いかな。おいしい料理を食べたら『これ、春巻に包んでもおいしそう!』って自然と考えているかもしれません」
この「あるものから作る」というアプローチは、まさに家庭で春巻を楽しむ醍醐味。冷蔵庫にある食材や、普段何気なく食べているおかずも、春巻の具材として新たな魅力を発揮します。
えびの春巻以外に、身近な材料で作れ、意外性が楽しめる春巻2品を教えてもらいました。
●納豆ときゅうりの春巻
<材料>
納豆1パック、きゅうり、鶏ももひき肉(余力があればホタテを加えてもおいしい)、塩、しょうゆ、ごま油、黒こしょうを各少々
<作り方>
納豆は付属のタレとからしを入れ、きゅうりは納豆と同じくらいの大きさの角切りに。ボウルに納豆ときゅうり、鶏ももひき肉、調味料を入れて混ぜ合わせます。えびの春巻と同様に、巻いて揚げたら完成です。
山本さん「意外な組み合わせ…と思いきや、相性抜群!パクチーなどの香味野菜のほか、ごまをプラスしても、香ばしくなってオススメです。ひき肉の代わりに、しゃぶしゃぶ用の豚肉で納豆ときゅうりを巻いてもおいしいですよ」
●千切り大根とモッツァレラチーズの春巻
<材料>
大根、モッツァレラチーズ、塩少々
<作り方>
大根は千切りにし、軽く塩もみをして水気を絞ります。春巻の皮と並行に大根をのせ、上にひと口大にちぎったモッツアレラチーズ(ひと口タイプのものでも)をのせたら、隙間がないように巻き、先ほどと同様に揚げます。
山本さん「大根は塩もみだけでも十分おいしいですが、ごま油や花椒を加えたりすると違うおいしさを味わえます。余った塩もみ大根は、白ワインビネガーをかけてマリネすれば、もう一品になりますよ」
ロール状の春巻の他に、山本さんが「よく作ります」と言うのが三角形の春巻。「見た目がかわいく、一口サイズで食べやすい。おつまみにするのにもぴったりです」。
<三角形の巻き方>
- 皮をタテ4等分にします。
- スプーン1杯弱の具を手前に置きます。この時、皮の両端の余白が少なめになるように、具を横に広げて置くと、中身がみっちり詰まって汁が漏れにくくなる効果があります。
- 下の角のどちらかを持って具を包み込むように三角に折り、巻きのベースを作ります。
- ③のベースを軸に三角の折り返しを繰り返し、余った皮の端に水をつけ、巻き終わりをピタッとくっつけて閉じます。
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春巻の可能性は無限大!広がる新たな楽しみ方
春巻の新しい世界を見せてくれた、山本さん。今後について「春巻が手軽で自由に作れることをもっと多くの人に広めていきたい」と話します。その思いを形にするため、イベント開催なども視野に入れているそう。今後の活動にも注目です!
みなさんも、ぜひ山本さんのインスタグラム(@harumakihyakuchin)から新たな春巻の世界を覗いてみてください。そして、自由な発想で春巻を作ってみてはいかがでしょうか。