お客様相談センターと聞いて、みなさんはどのようなイメージを浮かべますか?商品の不具合や困りごとを伝える窓口、でしょうか。
「実際に寄せられるお声の大半は、商品の使い方や保存方法についての質問なんですよ」
そう話すのは、味の素社のお客様相談センターで働く汐崎さん。先日は、小学生のお客様から寄せられた「なぜ『やさしお®』をなめるとひんやりするのか?」というお手紙へのお返事が、SNSで大きな反響を呼びました。
「反響があったのは驚きでした。お客様に寄り添ったお返事をすることが私たちの仕事であり、日常ですからね」と、同じくお客様相談センターの小松さん。
日々、縁の下の力持ちとして活動する、味の素社のお客様相談センターのお二人に、同じ社内でも意外と知られていない仕事の内容や、心がけていることを聞きました。
インタビューした人
グループお客様相談センター 応対統括グループ
汐崎 菜穂子さん
2007年入社。本社での営業事務、食品研究所での官能評価、調理使用性評価などの商品評価業務を経て現在のグループお客様相談センターへ異動。お客様満足に繋がる仕組みを考える日々。料理好きな子どもに台所を散らかされながらも一緒に料理をする時間が楽しみ。
インタビューした人
グループお客様相談センター 企画・情報統括グループ
小松 由香さん
2008年入社。グループお客様相談センターに寄せられる声を商品改善や社内のモチベーションアップに繋げる業務を行なう。週末の楽しみは子どもとの公園やレジャー施設へのお出掛けとライブ鑑賞。
- 「お客様の声」を商品に活かす架け橋
- 子どもたちの「知りたい」に寄り添って
- お客様のひと言で実現した、進化の数々
- みなさまのお声、お待ちしています
01
「お客様の声」を商品に活かす架け橋
──まずは、お客様相談センターの役割について教えてください。
小松さん:お客様と社内の“架け橋”になるのが私たちの役割です。いただいたお声を真摯に受け止め、疑問や不安を解決する情報を提供することを心がけています。単にご質問に答えるだけでなく、お問い合わせの背景をしっかりと伺うことで、お客様に満足いただけるよう努めています。
──お二人は、具体的にどのような業務を担当されているのでしょうか?
小松さん:私がいるグループでは、お客様からのメールや手紙、お電話でいただいた商品の課題や気づき、ご期待などを1件ずつ読んでいます。それらを分析し、社内の関連部署へ届けることで商品の改善を検討したり、問い合わせへの回答内容を作成したりしています。また、ファンレターをいただいた際にも社内へ共有し、社員のモチベーションアップに繋げています。
汐崎さん:私の主な仕事は、お客様の応対をする担当者が、よりよい応対ができるよう、お客様と接する際の心がけや情報を整えて伝えることです。たとえば、お客様の想いに寄り添えるように味の素グループのマインドをお伝えしたり、お客様への返答に困らないように情報を整備して対応の方針をまとめたりしています。また、工場見学の際などにお客様からいただく嬉しい声を、お客様相談センターのメンバー全員が生産現場の社員へ伝える研修講師も務めています。
──味の素社には日々どのくらいの件数の問い合わせがあるのでしょうか? また、どのような内容が多いのでしょう?
小松さん:お電話は1日60件程です。最近は減少傾向にありますが、これはホームページに「よくあるご質問」を掲載したり、自動応対のチャットを導入したりして、お客様が自己解決できる環境を整えていることが理由だと思っています。
汐崎さん:よくお問い合わせいただくのは、賞味期限へのご質問ですね。たとえば、うま味調味料「味の素®」は、塩や砂糖のように長期間品質が変わらないので、賞味期限を設定していません。そのため、「適切に保管されていれば塩と同じようにずっと使えますよ」とご説明しています。
02
子どもたちの「知りたい」に寄り添って
──質問や疑問が多いといえば、自由研究で「塩」について調べていた小学生が抱いた「なぜ『やさしお®』をなめるとひんやりするのか?」という疑問に対してのお手紙でのやり取りが「X(旧Twitter)」で話題になりましたね。
小松さん:特別な対応をしたわけではなく、こういったお問い合わせに対するお返事は日常なので、Xで話題になっていると聞いて本当に驚きました。ちなみに、「やさしお®」が冷たく感じる理由は、原材料の一つである塩化カリウムの特性によるものです。
汐崎さん:Xでお褒めいただいていましたが、お問い合わせ時にかかった送料分の切手を同封したのも、普段からしていることなんです。お客様の声を改善に活かしている事例もたくさんあるので、また声を寄せていただきたい、という気持ちを込めています。
──子どもたちからの問い合わせは定期的にあるのでしょうか?
汐崎さん:工場見学時や商品へのファンレターなど、定期的にいただいています。とくに8月は夏休みの自由研究や宿題に関する質問が増えますね。なかには、「味噌汁は食事かおかずか」といったご質問もありました。いろんな角度から質問が寄せられます。
──そうした質問への回答を作成する際に、とくに気をつけていることはありますか?
汐崎さん:お子様向けの場合は、わかりやすい言葉を使うよう心がけています。実は今回も、最初のご返信案では「拝啓」「敬具」を文頭と文末に使っていたのですが、「お子様には馴染みがないかもしれないな」と考え、「こんにちは」と「ごきげんよう、さようなら」に表現を変えました。
小松さん:お返事の際は「一文一答」にならないよう心がけています。+αの情報を入れることで、お客様とのコミュニケーションがより豊かになり、一歩寄り添った対応ができると考えています。今回の場合も、「やさしお®」が冷たく感じる理由をキシリトールの例を挙げて、より身近な形でひんやりする現象を説明できるよう工夫しました。
03
お客様のひと言で実現した、進化の数々
──「お客様の声を改善に活かしている」とのお話がありましたが、どのように改善に活かしているのでしょうか?
小松さん:例えば、「Cook Do®」熟成豆板醤は元々100gの瓶だけだったのですが、「賞味期限内に使い切れない」「瓶だと使いにくい」という声をいただき、チューブタイプも発売しました。チューブの素材も、「最後まで絞り出しにくい」というお客様の声をもとに改良し、現在は、柔らかい素材に変更。100gの瓶と一緒に、65gのチューブを発売しています。
──使いやすさまで細かく考えられているんですね。
小松さん:お客様から「使いにくい」という声があったときは、実際に手を動かして、どこが使いづらいのか検証しています。「Cook Do®」などの新商品が出るときは、パッケージに書いてあるレシピを実際に作ってみて、問題なく作れるか、作りにくいところはないかも確認していますね。
汐崎さん:パッケージ裏面の作り方も、お客様の声から改善することがあります。「調理時間がわからない」という声があれば、「約5分炒めます」といった具体的な時間を記載したり、「なすはしっかりと焼き色がつくまで炒める」といった具体的な説明を加えたり。料理初心者の方でも困らずに作れるよう、細かい部分まで気を配るようにしています。
──パッケージを作る段階から関わっているんですか?
小松さん:内容や調理手順が伝わりやすいか、誤認するような表現がないかチェックしています。商品の開発を担当している部署から確認してほしいと頼まれたら、お客様相談センターのメンバーで確認し、気づいた点を伝えます。難しい表現があれば、わかりやすい言葉に置き換えることを提案したり、お客様と同じ目線を大切にしています。
──お仕事を通じて、とくにやりがいを感じる瞬間はありますか?
小松さん:お客様からのファンレターには本当に励まされます。「この商品を使ってこういうときに役立った」とか「商品のここがいい」といった声が届きます。そういった嬉しい声を社内で共有することで、工場の現場や研究所のメンバーなど、商品作りに関わる皆さんのモチベーションにもつながっていく。お客様と会社をつなぐ役割を担えることにやりがいを感じますね。
汐崎さん:私も同感です。あるとき、介護と仕事の両立で大変な思いをされていた方から「おかゆ(味の素社のレトルトパウチの商品)のおかげで救われた」というメールをいただきました。フルタイムで働きながら、お父様の介護をされている方で、疲れて食事を作る気力がなかった日に、この商品のおかげでいつも通りに温かい食事を出すことができたと。そんな風に、お客様の暮らしのお役に立てているんだと実感できる瞬間が、とても嬉しいですね。
04
みなさまのお声、お待ちしています
──最後に、これからもたくさんの声が寄せられることと思いますが、お客様へのメッセージをお願いできますか。
小松さん:お客様相談センターは、お客様が味の素社に対して声を寄せられる唯一の場所なので、みなさまにとって頼れる、お話ししやすい場所でありたいと思っています。お客様からの声は私たちの気づきにも繋がりますし、それが商品改善や事業にも反映されていきます。嬉しい声も、ちょっとした質問も、ぜひたくさんお寄せください。
汐崎さん:商品のパッケージにも記載をしていますが、お客様相談センターではお客様からのお声をお待ちしていますし、お客様からいただく声は、本当に一つひとつすべて見ています。今後も、色々と感じたことを教えていただきたいです。そして1つの商品へのお問い合わせをきっかけに、さらに他の商品も使っていただいて、「味の素社の商品っていいな」と思っていただけたら嬉しいですね。