肉マニア直伝

【肉マニア直伝】本格だけど簡単!秘伝のハーブ&スパイス香る自分史上最高のフライドチキン

FOOD
2026.08.21
【肉マニア直伝】本格だけど簡単!
秘伝のハーブ&スパイス香る
自分史上最高のフライドチキン

衣の豊かなハーブとスパイシーな香り、かぶりついた瞬間にじゅわっとあふれる肉汁……。フライドチキンといえば、人気ファストフード店を思い浮かべる方も多いはず。

家でフライドチキンをつくることはできるのだろうか…と思っていたところ、「お肉が大好きだからこそ、自分史上最高のフライドチキンのつくり方をみんなに知ってほしい!」とレシピ伝授を買って出てくれたのは、味の素社の食品研究所でも「指折りの肉マニア」として知られる木場隆介さんです。

「おいしい食感」を研究する「食感制御グループ」でお肉をおいしくする技術を開発・研究し続けてきた木場さん。業務でフライドチキンや唐揚げの香り・食感の研究に携わっていたこともあるのだそう。

そんな肉マニア・木場さんならではの、科学的アプローチとお肉への深い愛情が融合した、「家庭でお肉をおいしくする裏側」を、連続企画でお届けします。

役割:インタビューした人 所属:食品研究所 食感制御グループ 名前:木場隆介さんさん

インタビューした人

食品研究所 食感制御グループ

木場隆介さん

2012年入社。食感、味、香りのおいしさ設計技術開発を担当。硬い肉のスジをやわらかくする発明、しっとりジューシーなお肉にする発明、唐揚げのできたて風味を維持する発明、肉を使わずに肉らしい風味を付与する発明など、数々のおいしいお肉の特許技術を取得。自称ミートマスターとして、日々“おいしさ” によってもたらされる幸せの科学を探求中。

フライドチキンの決め手は「衣の食感」と「香り」

鶏肉の揚げ物といえば、唐揚げとフライドチキンがイメージされますが、この2つは一見似ているようで、実は作り方がまったく異なるのだとか。

木場さん「唐揚げは肉にしっかり下味を染み込ませて、片栗粉や小麦粉でまとめるのが基本です。一方、フライドチキンは肉自体の味付けは控えめにして、衣にしっかり味と香りをつけていくのがポイント。そうすることで、ひと口かじった瞬間からスパイスの香りがふわっと広がります」

木場さんが特にこだわったのが、衣の「食感」です。

木場さん「理想のフライドチキンは、カラッと揚がった衣にかぶりついた瞬間に、中からじゅわっと肉汁が出てくるものだと思っています。市販のフライドチキンは、揚げてから少し時間が経っているので、衣がしなっとしてしまっていることが多いんですが、個人的にはザクザクの衣が好きなんですよね。揚げたての衣と、お店らしい本格的な味を自宅で再現したいなという思いから、今回のレシピにたどり着きました」

木場さんが話す様子

あの衣の食感を実現するために木場さんが選んだのは「強力粉」。

木場さん「通常の薄力粉より含まれるタンパク質が多く、強固なグルテン構造ができるため、歯ごたえのあるしっかりした食感が生まれます。さらに、あえてダマをつくりながら衣を付けていくことで、『ザクザク感』を実現しています」

木場さんが話す様子

衣の食感と同じぐらい、フライドチキンに大事な要素だと木場さんが話すのが「香り」です。しかし、今回使うスパイスはたったの4種類。

木場さん「専門店では十数種類のハーブとスパイスを使っているとも言われています。本格的な香りや味を楽しみたいけれど、自宅でたくさんの種類のスパイスを用意するのは大変なので、さまざまな組み合わせを試していった結果、この4種類の組み合わせにたどり着きました」

1種類で複合的な香りを出す万能スパイス「オールスパイス」などをうまく組み合わせることで、お店のような複雑なスパイス感を出すのだそう。

ここからは実際にレシピに沿ってつくってもらいながら、気をつけたいポイントとこだわりを見ていきましょう!

ポイント1:肉の下準備はていねいに

肉を拭く様子

手順1:鶏肉は水気をキッチンペーパーで優しく拭き取る。血管、筋、硬い腱を取り除き、こぶし大に切る。

最初に行うのが、キッチンペーパーで鶏肉の水気をしっかり取ること。

木場さん「お風呂上がりにタオルで拭くときのように、優しくポンポンと肉の表面をおさえてあげてください。水気が残っていると臭みの原因になりますし、バッター液が水分で薄まって衣のつきが悪くなってしまうんです」

筋を切っている様子

続いて、血管・筋・硬い腱などを丁寧に取り除きます。この処理をきちんとやるかどうかで、口当たりと風味が大きく変わってくるのだといいます 。

木場さん「白い腱のところや血管が通っているところがあると、噛み切れず、食べにくさや血生臭さを感じることがあるのですが、さっと取り除くだけで仕上がりがぐっと良くなります。もも肉は小さな筋肉がたくさん集まっているので、その接合部分に腱が入り込みやすい。ここを取り除いてあげると、口当たりが全然違うんです。」

鶏肉がまな板に並んでいる様子

鶏肉はこぶし大程度(3〜4等分)に切り分けます。大ぶりにカットするのも、フライドチキンらしさを演出するポイント。

木場さん「私は皮が大好きなので取りませんが、苦手な方は取ってもOKです。揚げ焼きにすると皮目がパリっとなって、それがまたおいしいんです」

今回使うのは若鶏もも肉。

木場さん「使う鶏肉は、国産の若鶏もも肉がおすすめです。ふっくらジューシーに仕上がるため、フライドチキンの醍醐味であるかぶりついたときの肉汁が格段に違うんです。脂が苦手な方は胸肉でも同じレシピで作ることができますよ」

ポイント2:バッター液はお肉にしっかりまとわせる

手順2:ボウルにバッター液の材料を粉→水→溶き卵の順に入れてよく混ぜ合わせる。

下処理が終わったら、バッター液(衣付けに使う液体)を作ります。

木場さん「バッター液の材料は、薄力粉、全卵、水、酒、『味の素®』、海塩、そして白こしょう、ガーリックパウダー、オールスパイスのスパイス類です。このレシピではぜひ、『瀬戸のほんじお®』のように、にがり成分を含む海塩を使ってみてください。まろやかな味わいがフライドチキンに合うんですよ。

混ぜる順番は粉、水、卵の順がポイント。先に粉を入れることで均一に分散しやすくなります」

バッター液の材料がボウルに入っている様子
「『味の素®』は、香りの邪魔をせずによりうま味を引き出してくれるので、フライドチキンのような香りを大切にする料理にも向いています」と木場さん

材料の配合も試行錯誤の末、辿り着いた比率なのだとか。

木場さん「鶏肉2枚分に対して水の量は大さじ1.5というのがポイントなんです。これより多いとゆるくなってバッター液が肉に残らず流れてしまうし、少なすぎると粉っぽくなる。いろいろ試した中でこの量がいちばんまとわりつきがよかったですね。お肉の量を増やす場合には、水の量も含め、全てのバッター液の材料を倍量にしてくださいね」

鶏肉をバッター液に混ぜる様子

手順3:鶏肉をバッター液に漬け込む。夏場は冷蔵庫で30分、冬場は常温で15分置く

バッター液が完成したら、鶏肉をしっかりとくぐらせます。全卵を使うのも、木場さんが試行錯誤した末に選んだこだわり。

木場さん「卵白のみ・卵黄のみでも試してみたものの、全卵を使った方が粘りとコクのバランスが絶妙で、衣のつきがよかったです。液が均一にからまったら、バッター液に漬け込んでください」

ポイント3:衣はあえて「ダマ」を作る

衣の粉をバットで混ぜている様子
ちょっとめずらしいセロリーソルトは、インターネットなどで購入できる。大型スーパーのスパイスコーナーや輸入食品店に置いてあることも。塩気とハーブの香りが同時につくので、余ったら、肉料理全般に使える万能調味料として活用できます。

手順4:バットに衣の強力粉、セロリーソルトを入れて混ぜ合わせ、バッター液を少量たらしてダマを作る。

バッター液に漬け込んだ鶏肉を、次は強力粉の衣にまとわせていきます。

木場さん「衣には、セロリーソルトという、セロリの粉末などがブレンドされたシーズニングスパイスをあらかじめ混ぜ込んでいます。最初にかぶりついたとき、真っ先にふわっと香るハーブの香りがここから生まれます」

粉にバッター液を少量入れている様子
ダマを作るために入れるバッター液は、大さじ3杯分ぐらいが目安とのこと

木場さん「衣をつけるときに隠し技があります。最初に粉の中にバッター液を少し垂らして、わざとダマを作っておくんです。そのダマが、揚げたときにザクザクした食感を生み出してくれます。同じバッター液から作るので、衣との一体感があるんですよね」

鶏肉に衣の粉をつけている様子
このぐらい衣の粉はしっかりと両面につけるのがポイント

手順5:鶏肉を衣にまとわせる。

バッター液をくぐらせた鶏肉を強力粉の衣に入れ、全体にしっかりとまとわせます。余分な粉は軽く落とす程度でOK。

木場さん「このフライドチキンでは、最初の一口目から最後まで香りが楽しめることを目指しました。かぶりついたときにまず衣のセロリーソルトの香りがふわっと立って、食べている間は内側に閉じ込められたハーブを感じられるよう、バッター液と強力粉、それぞれにスパイスを入れました」

ポイント4:180℃の温度をキープして揚げ焼きに

菜箸を油の入ったフライパンに入れている様子
180℃の目安は、菜箸を入れたときにプスプスと細かい気泡が出てくる状態。温度計がない場合は、この気泡の様子と揚げ色を見ながら判断します

手順6:フライパンに米油を底から1cm入れ、180℃に熱する。

揚げ油はフライパンの底から約1cmほどでOK。

木場さん「少量の油でも、しっかり傾けながら返していくことでちゃんと揚がります。油が少ない分、夏場でも作りやすいですよ。

また、最初から油を高温にしすぎないことが大事です。温度が上がりすぎると、外側だけ焦げて中まで火が通りにくくなってしまいます。いったん高温になると温度が下がりにくくなるので、最初からじっくり温度を上げて180℃をキープするようにしてください」

鶏肉を揚げ油に入れた様子

手順7:鶏肉を皮目から入れ、衣がかたまってきたら、裏返しながら揚げる。

木場さん「鶏肉は皮目から油に入れ、最初はなるべく動かさないようにしてください。そうすることで、衣が剥がれずしっかりとくっついてくれます。少し時間が経って衣が固まってきたら、火の通りを確認しながらじっくり揚げていきます」

フライパンを傾ける様子
油が少なくなってきたらフライパンを傾けながら全体に火を入れます

手順8:きつね色になり、気泡が大きくなってきて竹串で刺して透明な汁が出たら、取り出して、5分ほど休ませる。

木場さん「醤油を使わない衣なので揚げ色はゆっくりと色づいていきます。きつね色になってきたら裏返して、両面とも同じ色がつくまで揚げます。気泡がだんだん大きくなってきたらほぼ完成です」

揚がっているか確認している様子

木場さん「中まで火が通ったかどうかは、竹串を刺して確認してください。透明な汁が出てくれば完成のサイン。赤い汁が出てくるようなら、もう少し加熱が必要です」

やっぱり揚げたてがいちばん!

からりと揚がったチキンをバットへ引き上げたら、5分ほど休ませてから盛り付けます。クッキングシートで包んで手で持って食べると、お店さながらのフライドチキンに。

揚がった様子

木場さん「揚げたてを食べられるのは、自分で作るからこその特権だと思っています。あの香りが部屋中に広がるなかで、できたてをつまみながらハイボールを飲む。それが格別なんですよね。やっぱり自分で作る揚げたてがいちばんおいしいと思っています」

木場さんがフライドチキンを持つ様子

実際に試食してみると、ザクザクっとした歯ごたえの後、今度は肉汁がじゅわっ。香ばしさとジューシー感、奥行きのあるスパイスの香りが口いっぱいに広がり、まさにお店で食べるような味わいでした。

木場さんがこのレシピにたどり着いたのは、「あの味を自宅で食べたい」という思いから。それを研究者としての知見で徹底的に分解して、家庭でできる最良のアプローチに落とし込んでいます。

木場さん「外でおいしいものに出会うと、なぜこんなにおいしいんだろう、自分でも作ってみたい、って思うんです。そのおいしさの解明が、とにかくたのしいですね」

4種のスパイスと強力粉さえあれば作れるフライドチキン。ぜひ、キッチンに漂うスパイスの香りをたのしみながら、挑戦してみてください。

材料&調理手順

材料(2人分)

鶏もも肉(国産若鶏)2枚(1枚当たり300〜400g)
〈バッター液〉
A:海塩小さじ2/3
A:薄力粉 小さじ6
A:うま味調味料「味の素®」 10ふり
A:白こしょう小さじ2/3
A:ガーリックパウダー 小さじ1/3
A:オールスパイス 小さじ1/4
B:水 大さじ1・1/2
B:酒(清酒) 小さじ2
溶き卵 1個分
〈衣〉
強力粉 100g
セロリーソルト 小さじ2(強力粉の10%)
米油(サラダ油でも代用可) 適量

つくり方

  1. 1

    鶏肉は水気をキッチンペーパーで優しく拭き取る。血管、筋、硬い腱を取り除き、こぶし大に切る。

  2. 2

    ボウルにバッター液の材料をA→B→溶き卵の順に入れてよく混ぜ合わせる。

  3. 3

    (1)の鶏肉を(2)のバッター液にくぐらせ、15分漬け込む。(冷蔵庫の場合は30分)

  4. 4

    バットに衣の強力粉、セロリーソルトを入れて混ぜ合わせ、(2)のバッター液を少量たらしてダマを作る。

  5. 5

    (3)の鶏肉に(4)の衣にまとわせる。

  6. 6

    フライパンに米油を底から1cm入れ、180℃に熱する。

  7. 7

    (5)の鶏肉を皮目から入れ、衣がかたまってきたら、裏返しながら揚げる。

  8. 8

    きつね色になり、気泡が大きくなってきて竹串で刺して透明な汁が出たら、取り出して、5分ほど休ませる。

  • 執筆
    ひらいめぐみ
  • 撮影
    須古 恵
  • 編集
    花沢亜衣