おいしそうな料理を発信する人たちは、普段どんな食生活を送っているのでしょうか。連載「I EAT FOR」は、人気料理クリエイターたちの“食べる理由”をひもとくインタビュー企画。
今回は、忙しい人のための時短レシピを発信する、もあいかすみさん。仕事と育児の中で見つけた、がんばりすぎずに食を楽しむヒントを聞きました。動画とあわせてお楽しみください!

インタビューした人
料理研究家・管理栄養士
もあいかすみさん
料理研究家・管理栄養士。食品メーカーでのメニュー開発、広告プランナーを経て独立。簡単・時短レシピを中心に発信し、Instagramフォロワー110万人超。キッチンブランド「moai」をプロデュース。
動画はこちら
どこまでズボラになれるか
——もあいさんの時短レシピは、忙しい日の味方として支持されています。発信を始めた頃から、時短レシピが中心だったんですか?

もあいさん「実は、最初は『おしゃれな料理のほうが見てもらえるのかな』と思って、ビーツやハーブを使った料理を発信していたんです」
——ビーツの料理は好きでも、普段の自炊では遠く感じる人もいそうです。

もあいさん「そうなんですよね。普段の自分はもっと手軽なものを作っているのに、『料理上手に見られたい』と背伸びしていたのかもしれません(笑)。
結果、再生数もイマイチで。それなら、いつも作っている手軽でおいしい料理をやろうと思ったんです」

——最初は、普段の自分とのズレがあったんですね。実際にお話ししていても、もあいさんはすごく自然体な印象があります。

もあいさん「『真面目でしっかりしてそう』と言われるんですけど、本当は真逆なんです。だらしない系というか(笑)。カメラが回ると、ちょっといい格好をしちゃうところもあるんですけど、もともとは結構ゆるいタイプだと思います」
——それは意外です。

もあいさん「でも、だからこそ時短レシピが自分に合っていると思います。私自身、会社員の頃に、仕事で疲れた日も、簡単においしい料理が食べたくて。そういう自分のために、時短レシピを考えるようになったんです」
——時短料理のコツは何でしょうか?

もあいさん「大切にしているのは、『おいしさを保ちながら、限界まで工程を削ぎ落とすこと』です。
たとえば、下茹でせずにレンジで済ませたり、包丁を出さずにレシピを工夫したり。『本当にいるのかな?』と思う工程は省きながら、それでもおいしく作る方法を考えるのが好きなんです」
——案外省ける工程があるんですか?

もあいさん「家庭料理はそうだと思います。レストランの料理は、工程が複雑になっても、よりおいしいものを目指す方向ですよね。でも、普段の家庭料理は、逆の考え方もアリだと思っています。おいしさを維持しながら、どこまでズボラになれるか。そういう考え方が私には合っています」
子どもと一緒に食と暮らしを整える
——お子さんが生まれて、生活が大きく変わったそうですね。

もあいさん「だいぶ変わりましたね。以前は夜型で、朝6時に寝て、お昼すぎに起きるような生活だったんです。夜中じゅう好きなゲームをやったりもしていました」
——今とはだいぶ違う生活スタイルですね(笑)。

もあいさん「でも、結婚して娘が生まれて、さすがにちゃんとしようと。今は朝7時くらいに起きて、保育園に送って、9時頃から仕事をしています。今の方が仕事もはかどりますし、充実しています」

——食事のリズムも変わりましたか?

もあいさん「前はお腹が空いた時間に食べる、という感じだったのが、今はなるべく決まった時間に食べるようになりました。お昼になるとちゃんとお腹が空くんです。普通のことかもしれないですけど、私にとっては大きな変化で」
——お子さんがきっかけで、生活が整ったんですね。

もあいさん「本当にそうです。自分の生活をおろそかにすると、そのまま娘の生活が乱れることになってしまうんですよね。私は元々意思が弱いというか、ほうっておくとダラダラしちゃうタイプだったので、娘がいてくれるおかげで、生活が健全になっています」
なんとなく避ける、をやめてみる
——食材や調味料の選び方も、お子さんの存在で変わりましたか?

もあいさん「かなり変わりましたね。子どもは、世の中のほとんどの食材が『初めて』みたいな状態から始まりますよね。だから最初はすごく慎重になりました。できるだけ自分で作って、成分もきちんと見て、完璧にやろうとしていたんです。
一時は、食品添加物をすべて避けようとストイックになっていたこともあります。でも、離乳食が終わる頃から、少しずつ考え方が変わってきました」
——どう変わったんですか?

もあいさん「たとえば、食品の中には、子どもに必要な鉄分が加えられているものもあります。何のために入っているか、自分たちの食事にどう役に立つか、そこまで考えて、上手く頼ったほうがいいこともあるなって」

——調味料についても、そうやって選ぶようになったんですか?

もあいさん「そうですね。最初の頃は、だしも含めて、できるだけ自分で用意したほうがいいのかなと思っていたんです。でも、毎日の食事でそれを全部続けるのは、やっぱり大変で。
それで、市販のものも含めていろいろ試すようになりました。手軽でもちゃんとおいしくできるもの、自分たちの生活に無理なく取り入れられるものを探していく中で、『ほんだし®』を使うようになったんです。
『なんとなく味が決まらないな』というときに、少し加えるだけで『あ、まとまった』と感じることが多くて。うま味が加わることで、塩分を控えてもしっかり味が決まるんですよね。こういう頼り方もあるんだなって思いました」
——無理に避けるのでなく、目的に応じて上手に頼る、という感じなんですね。

もあいさん「その方が、自分にとっては楽でした。すべてを完璧にやろうと思うと大変なので、ほどほどに。今は週末の外食も家族の楽しみですし、毎日毎食の栄養を完璧にはできません。一週間の中でバランスが取れればいい、くらいの気持ちで考えています」
手間に見えて、実は時短
——普段はお家では、どんなものを食べるんですか?

もあいさん「うちの子、魚の目が大好きなんです。珍しいですよね(笑)。娘が魚の目を食べたがるので、夕食はお魚が多くなりました。スーパーやお魚屋さんで、小ぶりのお魚を一尾まるごと買うことが多いです」
——丸ごとのお魚は、調理が大変そうなイメージがあります。

もあいさん「そう思うじゃないですか。でも、お店で鱗や内臓をとる下処理までしてもらえば、家ではグリルで焼くだけ。包丁もまな板も使わないので、切り身より楽なくらいです」

——一尾丸ごとの方が、かえって時短になるんですね。

もあいさん「あとは、うちは土鍋でお米を炊くんですけど、実は土鍋はすごく早く炊けるんです。手軽においしく炊けますし、食材や調理道具も、解像度を上げて考えてみると、選び方が変わることは多いです。
それから、うちの食卓に欠かせないのが味噌汁です。色の濃い野菜や青菜、きのこ、油揚げなど、植物性たんぱく質も入れて、ここで栄養バランスを整える感じです」
——魚、ごはん、味噌汁が夕食の定番ですか?

もあいさん「栄養的には、その3品で基本はOKという感じですね。余力があれば副菜を作ったり、フルーツを切ったりもします。無理なく続けられることが大切ですね」


——最後に、連載テーマである「I EAT FOR」について聞かせてください。もあいさんは、何のために食べていますか?

もあいさん「食べることそのものが好きなんです。『おいしい』と感じること自体が嬉しいし、食べることが一番の趣味というか。自分の『おいしい』を見つけたら、必ず誰かに伝えたくなります」
——「おいしい」を共有することが、お好きなんでしょうか。

もあいさん「そうかもしれません。考えてみれば、レシピを発信することも、自分が見つけた『おいしい』のシェアですね。家族に料理を作るのも『これ、おいしいよ』って、伝えたいんだと思います。そういう意味では、私にとって食べることは、『おいしい』を誰かと共有して、分かち合うことかもしれません」

