「味の素®」の“あの噂”って本当? ネットで見かける疑問を担当者にぶつけてみた

100年以上の歴史を持つ、うま味調味料「味の素®」。しかし、SNSなどのネット上では「体に良くなさそう」「人工的なものでできていそう」といった疑問やネガティブな声を見かけることも……。こうした生活者の不安や疑問を、製品の最前線に立つ担当者はどう受け止め、どんな思いで向き合っているのでしょうか。
そこで、「『味の素®』はよく使うけど、なんとなくケミカルなイメージはあったかも……」と語るライターが、味の素社で「味の素®」や「うま味だし・ハイミー®」などのブランドマネージャーを務める宮坂さんに直撃取材。原料や製造方法、味覚への影響、意外な使い方まで、率直にうかがいました。

インタビューした人
コンシューマーフーズ事業部 シーズニンググループ
宮坂 文浩さん
バングラデシュ駐在時代、現地のカレーに「味の素®」がパパパッと入れられているのを見て、自分の仕事が世界中の“おいしい”に貢献していると実感。「うま味を通して世界中の食卓にもっと笑顔を届けたい!」という想いで日々奮闘中!
ネガティブな声に対しては「反論や説得より、楽しさを届けたい」
――SNSをはじめとするネット上では、時折「味の素®」に対するネガティブなイメージが語られることがあります。私自身、「体に良くなさそう」「人工的なものなのでは」といった書き込みを目にしたことがありますが、宮坂さんもそうした声を直接目にしたり、耳にしたりすることがありますか?

宮坂さん 「『味の素®』の企画開発に携わるようになってから、SNSなどで見かけるそういった声を意識するようになりました。私たちが製品にまつわる情報発信をした際、その反応として『体に悪いものではないのか』と言われることがかつては多かったですね。
また、以前バングラデシュに4年間赴任していたのですが、現地の市場に商品を置いてもらいに営業し行くと、『こんな体に悪いものを売りに来て何なんだ』と厳しいお言葉をいただくこともありました」

――海外では、かなり直接的な言葉をぶつけられることもあったんですね。そういった厳しい声に、傷ついたり腹が立ったりすることはないんですか?

宮坂さん 「むしろ、『自分たちの情報発信がまだ足りていないな』と思ってしまうんですよね。私たちは『安全なものを作っている』と自負していますが、それはあくまで製造している企業側だから知っていること。一般の生活者の方々からすれば、『何から作られているかわからない』と不安になるのは当然です。
だからこそ、そうした方々が『大丈夫なんだ』と思えるような情報を、私たちがまだ届けきれていない。裏を返せば、それは私たちにとっての『伸びしろ』だとポジティブに捉えています」

――企業の担当者から「安全です」と一方的に説明されても、身構えてしまう人はいるかもしれません。ネガティブな声に対しては、正面から反論したり、説得したりすることはないのでしょうか?

宮坂さん 「ネガティブな声に対して、真っ正面からぶつかって論破するようなことは基本的にしません。こちらから説得しようとしても、企業からの説明的な話になってしまうと、なかなか相手には聞いてもらえないですからね。
それよりも、『料理にふりかけるとすごくおいしくなる』という『味の素®』の価値や楽しさについてしっかり届けることを意識しています。インフルエンサーの方々の楽しいメニュー発信などを通じてポジティブな声が増えてくることで、『なんだか良くなさそう』と不安に思っていた方々の態度も少しずつ変わってくると信じています。
実際に、若年層に向けた楽しい情報発信を続けた結果、『味の素®』に対して抱くイメージの調査で、『体に良くない』『人工的』と答える方の割合は数年で大きく減少しました。また、若年層の単身者やご夫婦を中心に購入率が伸びており、若年層の1人当たりの購入金額が10年前と比べて3倍近くになるなど、商品を手に取ってくださる方も着実に増えてきています※1」
※1 インテージ社 26年度うま味調味料ベンチマーク調査
「体に悪そう」「人工的・化学的」という誤解だけは払拭したい
――さまざまな疑問や不安の声があるなかで、宮坂さんが「これだけは特に知ってほしい」と思うことは何ですか?

宮坂さん 「やはり『体に悪そう』という誤解だけは払拭したいですね。食品ですから、安全に食べられるということが何より大切で、おいしさ以前の根幹の価値だと思っています」

――「体に悪そう」と感じる背景には、そもそも何からどう作られているのかを知らないこともありそうです。「味の素®」は実際にはどんな原料から、どのように作られているのでしょうか?

宮坂さん 「『味の素®』は天然の原料を発酵させて作っています。日本のものはサトウキビから、タイならキャッサバ芋、アメリカならコーンなど、各地でとれる天然原料を使い、グルタミン酸生成菌を用いて発酵させて作っています。
実際に私もタイなどの生産現場でその工程をすべて見ていますし、自信を持って安全だと言えます。また、FAO(国連食糧農業機関)やWHO(世界保健機関)などの中立的で世界的な機関に安全性が認められている製品なので、安心してお使いいただきたいですね」

――サトウキビなどを発酵させて作ると聞くと、いわゆる「人工的」「化学的」というイメージとはかなり印象が違いますね。それでも、そういったイメージが根強く残っているのは、なぜなのでしょう?

宮坂さん 「うま味調味料はかつて『化学調味料』と呼ばれていました。
うま味成分である『グルタミン酸』は人間の体内で生成されますし、母乳やトマト、昆布などにも含まれている身近な成分です。それなのに『化学的』というイメージが定着したのは、昭和の時代にさかのぼります。
当時、公共放送が特定の商品名を避ける方針のもと、『味の素®』を指す一般的な呼称として『化学調味料』を用いたことなどから、この言葉が広まりました。また、その頃は『化学』という言葉自体が、最先端の技術や豊かな暮らしを象徴する前向きなイメージを持っていました。そのため、『化学調味料』という呼び方も、むしろ先進的な製品というポジティブなニュアンスとして使われていたそうです。
しかし、その後の公害問題などで化学という言葉のイメージが悪化し、そこからネガティブなイメージが引きずられてしまったんです。決して『ケミカルな薬品で作られている』という意味の化学ではないことを、あらためてお伝えしたいですね」
「味覚に悪影響」って本当?使い続けても大丈夫なの?
――もう一つ、ネットなどでしばしば見かけるのが「使いすぎると味覚の形成に悪影響がある」「味覚が麻痺する」といった噂です。これについてはどうお考えですか?

宮坂さん 「そもそも、人間の舌の細胞は約10日間で入れ替わります。ですから、『うま味調味料の味に舌が慣れてしまって、味覚がおかしくなる』といった影響を示す科学的根拠は確認されていません。
ただ、どんな調味料にも『適量』があります。かけすぎてしまえば、うま味が強くなりすぎてしまうので、適量を守って使っていただくのが一番おいしく食べる秘訣です」

――「うま味調味料に頼るのは手抜きでは?」「プロの料理家が使うのはどうなの?」という声もありますが、宮坂さんはどう考えていますか?

宮坂さん 「まったく手抜きだとは思いません。むしろ、うま味調味料を使いこなしている方は、料理に対してすごく『丁寧』に向き合っていると感じますね。
例えば、お肉の下味付けに使ったり、冷凍のシーフードを解凍する際に水っぽくならないようドリップ対策として使ったり。酢の物の角をまろやかにしたり、お醤油の角を取ったりするために一振りする方もいらっしゃいます。
また、『味の素®』のポピュラーな使い方として、炒め物や卵かけご飯など味付けの最後に入れる方もいらっしゃると思いますが、味が決まらないときに細かく味を調整するのは、最後まで『おいしく食べること』を考えている証拠ですよね」

――なるほど。「味の素®」にまつわる噂について、どうお考えになっているかがよく分かりました。一方で、担当者として今後もっと知ってもらいたいことや、課題に感じていることはありますか?

宮坂さん 「実は、『味の素®』以外にも、うま味調味料を使ったさまざまな商品があるのですが、それらの違いを伝えきれていない点です。例えば、『ハイミー®』はより味が強く長く続きますし、『アジシオ®』は成分の9割が塩なので、うま味だけでなく塩味も足したいときに便利です。それぞれの特徴をもっと知っていただき、料理に応じて使い分けてもらえるようになると、さらに楽しい世界が広がると思っています」
おすすめは●●●に一振り!担当者が「味の素®」の楽しさを伝える原動力とは
――宮坂さん自身が普段よくやる、「味の素®」のおすすめの食べ方はありますか?

宮坂さん 「私自身が一番よく使っているのはサラダですね。オリーブオイルと『味の素®』、塩、そしてレモンやハーブを混ぜるだけで、すごくおいしい手作りドレッシングになります。オリーブオイルをごま油に変えればチョレギサラダ風にもなりますよ。『味の素®』は油との相性が抜群で、コクや素材の強さを引き出してくれるんです」

宮坂さん 「あとは、お米を炊くときに1合に対して1振り入れる使い方や、緑茶やウイスキーにほんの少し加えるのもおすすめです。一般的な緑茶も、うま味が加わることで味わいに奥行きがでて、玉露のような味わいになるんですよ」
――最後に、宮坂さんがそこまで情熱を持って「味の素®」の価値を伝え続ける、その原動力は何なのでしょうか?

宮坂さん 「実は大正時代にも、『味の素®は蛇から作られている』という根も葉もない噂をされたことがあったそうなんです。その頃から先輩たちが何十年もかけて誤解と戦い、苦労してブランドをつないできました。そのバトンを受け取った者として、よりよい状態で次の世代に渡していきたいという強い使命感が私の原動力です」


宮坂さん 「うま味成分はいろいろな食材に含まれているものなので、『味の素®』がまだ広まっていない国々にも、実はとても相性のいい料理や食文化があるのではないかと思っていて。まだまだ世界中の人々の毎日の食事をおいしくできるポテンシャルがあることにワクワクしています。
生活者に、『絶対に使って』と無理に押し付けるつもりはありません。私たちが発信する楽しさやおいしさに触れたときに、少しでも『使ってみたいな』『知ってみたいな』と思っていただけたら、それが何より嬉しいです」

