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ダマにならずになめらか!ルウなしで作るクリームシチューのコツを解説

ダマにならずになめらか!ルウなしで作るクリームシチューのコツを解説

2025/12/11

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「水気を切る」「浅めのフライパンで」「しょうゆを回しいれる」「ほどよく煮込む」……など、レシピには当たり前のように書かれている言葉の数々。でも、実際にどうすればいいの?

連載シリーズ「レシピのスキマ」では、そんなレシピからこぼれ落ちてしまう「大切なコツ」を調理科学で解き明かしていきます。

第11回目は「クリームシチュー」です。シチューの素は使わず、小麦粉・バター・牛乳をベースに、ダマにならずなめらかに仕上げるコツを、味の素社の研究者・川﨑さんに教えていただきます!

(はがれない&ぱさつかないピーマンの肉詰め、素材のうま味を引き出すポトフをつくるコツなどを解説してきたこれまでの「レシピのスキマ」はこちらから読めます!)

インタビューした人

味の素社 研究者

川﨑 寛也さん

博士(農学)、味の素(株)Executive Specialist、NPO法人日本料理アカデミー理事 調理科学者、感覚科学者。生家は明治20年創業の西洋料亭「西洋亭」(北海道・根室で創業。現在は廃業)。京都大学大学院農学研究科博士後期課程修了。専門は、おいしさの科学、プロの調理技術の解明など。主な著書に『味・香り「こつ」の科学』『おいしさをデザインする』『だしの研究』(以上、柴田書店)、『日本料理大全 だしとうま味、調味料』(NPO法人日本料理アカデミー)ほか。研究分野は、おいしさの科学、プロの調理技術の解明、食の体験と心理的価値の関連解明など。

  1. ダマにならないコツは、小麦粉の入れ方にあり!
  2. ポイント1:肉はしっかり焼いて、香ばしさを出す!
  3. ポイント2:バターは、サラダ油とダブル使い
  4. ポイント3:小麦粉は火を止めて、まんべんなくふりかける
  5. 【おまけの科学】牛乳と白ワイン、合わせて煮立たせたらどうなる?

01
ダマにならないコツは、小麦粉の入れ方にあり!

クリームシチューは、「ダマになってしまう」というお悩みの声をよく聞きます。そもそも「ダマ」とはどのようなもので、なぜできるのでしょうか。

川﨑さん「ダマとは、小麦粉が牛乳などの液体に溶けきらず、残ってしまったかたまりのことです。
小麦粉に含まれるてんぷん質は、水分と加熱によって糊状になり、『糊化(こか)』します。糊化が全体に均一に進めば、なめらかなとろみになりますが、部分的だとダマになってしまうのです」

では、ダマを防ぐにはどうすればいいのでしょうか。そのヒントになるのが、フランスの煮込み料理「フリカッセ」です。

川﨑さん「フリカッセでは、牛乳や生クリームを加える前に、炒めた具材に小麦粉をまぶします。小麦粉をまんべんなくまぶしてから水分を加えることで、糊化がムラなく進み、なめらかに仕上がるんです」

小麦粉の入れ方で仕上がりが変わるんですね!では、ここからは実践しながら調理のポイントを川﨑さんに教えてもらいましょう!詳しい材料や手順は記事の最後でご紹介しますね。

02
ポイント1:肉はしっかり焼いて、香ばしさを出す!

一口大に切った鶏もも肉に、塩で下味をつけ、焼きます。

鶏もも肉を焼いた際にでる脂には鶏のおいしい香りが出ているので、拭き取らずに野菜を炒めるときにも使います。

川﨑さん「両面ともきつね色になるまで焼きます。この焼き色は、肉に含まれるアミノ酸と糖が加熱されることで起こる『メイラード反応』によるもので、香ばしい香りのもとになります」

(メイラード反応については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。)

このあと煮込むので、中までしっかり火が通っていなくても大丈夫

川﨑さん「しっかりと焼き目がついたら、鶏肉を一度取り出します。火を通しすぎるとかたくなってしまうためです」

03
ポイント2:バターは、サラダ油とダブル使い

続いて、鶏肉を焼いたフライパンにバターとサラダ油を加え、玉ねぎ・しめじ・にんにくを炒めます。じゃがいもはシチューができあがる直前に加えるので、皮をむいて4等分に切り、取り分けておきます。

玉ねぎはくし形に切る。にんにくは包丁の腹でつぶす。しめじは石づきを取ってほぐしておく。まいたけやマッシュルームでもおいしく作れる

川﨑さん「バターにはアミノ酸などのうま味成分が含まれているため、コクがでて、味に深みが生まれます。ただバターだけで炒めると焦げやすいため、半量をサラダ油にすることで、うま味とコクを出しつつ焦げにくくします」

04
ポイント3:小麦粉は火を止めて、まんべんなくふりかける

野菜に油がまわりツヤが出たら、小麦粉を加えます。ここでのポイントは「火を止めること」、「小麦粉はふりいれること」。

野菜から出てくる水分と余熱でも糊化は進んでしまう

川﨑さん「この時点で糊化が進むと、ダマの原因に。とろみは牛乳で煮込むときにつけたいので、火を止めて作業し、糊化を抑えます。

小麦粉を一箇所にまとめて入れるのも、ダマの原因になります。全体にふりかけるようにまんべんなく加えましょう」

炒めていると粉の白さが目立たなくなり、しっとりしてくる

全体を混ぜたら火をつけ、弱火で粉っぽさがなくなるまで炒めます。

川﨑さん「炒めることで小麦粉のでんぷん粒が油でコーティングされます。油の膜があるおかげで、牛乳を加えても小麦粉が一気に水分を吸わず、ダマになりにくくなります」

鶏もも肉をフライパンに戻し、牛乳・水・コンソメを加えます。

鶏肉を戻すときは、肉汁も一緒に戻す。ここにうま味がたっぷりつまっている

沸騰したら5〜6分ほど強火で煮立たせます。このとき「グツグツ」と煮立たせるのがポイントです。

川﨑さん「強火で煮詰めることで、水分が蒸発してスープの濃度が濃くなり、とろみもでやすくなります。ただ小麦粉に含まれるでんぷん質は焦げやすいので、ときどきかき混ぜてくださいね。吹きこぼれにも注意しましょう」

右側が煮詰めの終盤。ブクブクと勢いよく弾けていた泡が、ポコポコとゆっくりとした動きに。

煮詰めている間に、取り分けておいたじゃがいもを電子レンジで加熱します。煮込みすぎによる煮くずれも防げて、短時間で火が通るので時短にもなります。

じゃがいもは、濡らしたキッチンペーパーとラップで包むことで、乾燥を防いでしっとりと仕上がりに。火通り具合は竹串などを刺してチェック!(根菜のおいしさを引き出すポイントはこちらの記事で詳しく紹介しています。)

フライパンにじゃがいもを加えたら、弱火で煮詰めます。煮詰め終わりの目安は、「全体にとろみがついたら」。塩で味をつけて、できあがりです!

塩は仕上げ直前に。素材のうま味が出る前は味が薄く感じ、塩の入れすぎにつながる可能性がある

ふわっと香ばしい香りが、湯気にとけて立ち上がります。まずはソースを一口。牛乳のコクに野菜や肉のうま味が溶け出し、とても濃厚です!肉はしっとりと柔らかく、噛むほどにうま味を感じました。肉をしっかり食べたいけれど、やさしい味でほっとしたい。そんな気分の日にぴったりの一皿です。

「シチューの素を使わずに作るのはちょっと不安…」という方も大丈夫。ポイントを押さえればダマにならず、なめらかに仕上がりますよ。ぜひご自宅で試してみてくださいね。

05
【おまけの科学】牛乳と白ワイン、合わせて煮立たせたらどうなる?

詳しいレシピをご紹介する前に、特別編として“実験コーナー”をお届け!

今回参考にしたフリカッセは本来、生クリームと白ワインを使ってつくるのが定番です。白ワインの酸が生クリームの濃厚さをやわらげ、香りにも奥行きを出してくれるんだとか。

では、牛乳を使う場合にも白ワインを加えた方がよりおいしくなるのでは?と川﨑さんに聞いてみると「科学的にみると、組み合わせるのが難しい」とのこと。その理由を実験で見せていただきました!

温めた牛乳に、アルコールを飛ばした白ワインを加えて火にかけると……?

カッテージチーズのようにボロボロになってしまいました。

川﨑さん「牛乳は生クリームに比べてたんぱく質が多いため、酸の影響を受けるとたんぱく質が固まりやすくなり、分離します。そのため、今回は白ワインは使いませんでした」

調理の裏にある科学を知ると、材料の組み合わせやつくり方にもちゃんと理由があることがわかりますね!

材料&調理手順

材料(2人分)
鶏もも肉
1枚
じゃがいも
1個
玉ねぎ
1/2個
しめじ
1パック
にんにく
1かけ
小さじ1/2
サラダ油
大さじ2
バター
大さじ1
薄力粉
大さじ2
A:牛乳
300cc
A:水
100cc
A:「味の素KKコンソメ」<顆粒タイプ>
小さじ1
適量
  1. じゃがいもは4等分にし、玉ねぎはくし形に切る。しめじは石づきを取ってほぐし、にんにくはつぶしておく。鶏肉はひと口大に切り、塩小さじ1/2で下味をつけておく。
  2. フライパンに油を入れ、(1)の鶏肉の皮を下にして、焼き色をつける。こんがりと焼き色がついたら裏返す。両面に焼き色がついたら、取り出す。
  3. (2)のフライパンにサラダ油とバター、(1)の玉ねぎ・しめじ・にんにくを入れる。火をつけて、中火で全体につやが出てくるまで(油が回ったしるし)炒める。
  4. いったん火を止めてから薄力粉をふり入れ、全体を混ぜたら弱火で炒める。
  5. (2)の鶏肉、Aを加え、沸騰後5〜6分ほど強火で煮立たせる。焦げないように途中でかき混ぜる。
  6. (1)のじゃがいもを濡らしたキッチンペーパーとラップで包み、電子レンジ(600W)で1分30秒ほど加熱する。
  7. じゃがいもを加えて弱火にし、全体にとろみがついたら、塩で味をととのえる。
  • 執筆/佐々木 まゆ 撮影/佐々木 孝憲 編集/花沢亜衣
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