1日の終わり、キッチンではどんな風に過ごしていますか?
明日のために、今日をよりよく終えられたら。少しでもコンディションを整えることにもつながるはず。
みなさんの「夜時間」を知りたくて、料理家のワタナベマキさんのキッチンを訪ねました。夫婦と息子、2匹の猫と暮らすワタナベさん。「夫も息子も帰宅が遅いので、平日の夜は食事もバラバラ、ひとりで過ごすことも多いんです」。
インタビューした人
料理家
ワタナベマキさん
料理家。雑誌や書籍、イベントなどで幅広く活躍。グラフィックデザイナーを経て「サルビア給食室」として料理家の活動をスタート。おいしく丁寧でありながら、シンプルなレシピが人気を呼び、毎日の料理の参考になる著書を多数出版している。近著に『日本の一年、節目の一皿』(小学館)、『ワタナベマキのサッと蒸し、ほっこり蒸し』(NHK出版)がある。
- 朝型だからこそ、夜は無理なくできることを
- 翌朝のために“名もないスープ”を仕込む
- お弁当にも夕食にも。肉や野菜に下味だけつけておく
- 気持ちよく朝を迎えるための夜の片付け&掃除
- やるべきことがすんだら、ゆったり自分時間でリセット
01
朝型だからこそ、夜は無理なくできることを
——普段、夜の時間をどう過ごしていますか?
ワタナベさん:朝5時に起きている私は22時には寝たいのですが、高校3年生の息子が受験勉強で忙しく、最近は帰宅が22時半ごろ。なんとか帰りを待って夕食を出して、「これ食べてね。おやすみ」という感じ。食器洗いは、すべて食洗機におまかせ。息子には、使った食器を自分で食洗機に入れ、ボタンを押してもらっています。
——夜に料理の仕込みをすることもありますか?
ワタナベさん:朝はお弁当や朝食作り、日中に撮影があればその準備などで慌ただしいので、夜できることはしています。やっておくと明日の自分のためになるから、無理なく、できることを。
仕込みといっても、夕食後に時間を取るのは難しいので、夕食を作りながら一緒にやってしまいますね。煮込み料理の待ち時間を使ったりすれば、意外と手早く進められるんです。
02
翌朝のために“名もないスープ”を仕込む
——たとえば、どんな仕込みですか?
ワタナベさん:毎日のようにしているのは、朝ごはんの仕込み。夕食用の野菜を切るついでに、撮影などで半端に余った野菜を角切りにして鍋に入れ、冷蔵庫にしまっておきます。朝はそれでスープを作るんです。
——味付けはどうするんですか?
ワタナベさん:塩だけで野菜のうま味を生かしても十分おいしいし、ごま油やしょうがで中華風にすることも。ソーセージや鶏肉を加えたり、卵を落としたり。お味噌汁にしてもいいですしね。
毎朝のスープのために、具材を考えなくていいのも助かります。余り野菜で作る“名もないスープ”が、我が家の朝ごはんの定番です。
ワタナベさん:夜に昆布水も仕込んでおくとアレンジできて便利です。料理のひと手間は惜しみたくないけど、毎回だしをとる余裕もない。そんな時にあると救われます。朝のスープにも、夜のお味噌汁にも使えますし、調理の時に、いりこやかつお節を足して使うこともあります。
03
お弁当にも夕食にも。肉や野菜に下味だけつけておく
——ほかにも、明日の自分のためになる「夜の仕込み」はありますか?
ワタナベさん:手の込んだことはしませんが、鶏肉を2枚買ったら、その日の夜に1枚使って、もう1枚はしょうゆとみりんをもみ込んでおきます。このまま3日くらいは冷蔵庫で保存できるので、照り焼きにしたり、唐揚げにしたり。すぐに使わないときには冷凍しておきます。豚の切り落とし肉なら、しょうがとしょうゆの下味もいいですね。
日々の夕食やお弁当作りの時に、気持ちがずいぶん楽になりますよ。
——「夜の仕込み」のコツはありますか?
ワタナベさん:味を決めすぎないことと、作りすぎないこと。作るのは1〜2品にし、数日で使い切れる量にとどめます。
キャベツが余ったら細切りにして塩もみしておくとか、それくらいのことです。キャベツの塩もみは万能で、塩気を絞ってマリネにしてもいいし、酢の物にもなる。ハムと合わせてサラダにもできるし、最後は煮たり炒めたりすることも。
味を決めないから、いろいろとアレンジできるので飽きずに使い切れます。何より夕食を作りながらでも、負担なく仕込めることがいちばんですね。
ワタナベさん:あと、ごはんはほとんど朝炊きますが、朝からお米を研ぐのはたいへんなので、夜のうちに研いでザルにあげて浸水しておきます。夏場は冷蔵庫に入れ、冬場は外に出したまま。ごはん用の土鍋で炊きますが、7分で炊きあがってあとは10分程度蒸らすだけ。忙しい朝にもちょうどいいんです。
私は炊きたてよりも冷めたごはんが好きなので、炊けたらすぐにおひつへ。夜もそれを食べています。おひつが水分の調整をしてくれるのでおいしくなるし、お弁当のごはんにもいいんです。
04
気持ちよく朝を迎えるための夜の片付け&掃除
——仕込み以外に、片付けや掃除はどうしていますか?
ワタナベさん:キッチンの作業台とダイニングテーブルは、できるだけ物を出したままにしないように、夜のうちに片付けて水拭きしています。朝起きて部屋へ入った時、すぐ目につく場所なので、きれいだとそれだけで気分よく始められます。
寝る前に、一日分の生ゴミを生ゴミ乾燥機にセットするのも、毎日の習慣ですね。朝には生ゴミがパリパリになっているので、そのままゴミ箱へ。ゴミの量も減るし、乾燥した野菜くずは庭の植物の肥料としても使っています。仕事柄、生ゴミの量が多いのですが、夏場でも匂いが気にならないからストレスもなくなりました。
——ほかに習慣にしていることはありますか?
ワタナベさん:翌日も気持ちよく仕事や家事ができるように、夜のうちにふきんを煮沸しています。琺瑯の洗面器にお湯とふきんを入れて煮沸すると、びっくりするくらい汚れが落ちるんです。寝る前の片付けをしている間にぐつぐつ煮込んで、あとは乾燥機へ。お料理でだしを取るといったひと手間は惜しまない代わりに、掃除や片付けなど面倒に感じることは、できるだけ便利なツールや家電に頼って乗り切っています。
05
やるべきことがすんだら、ゆったり自分時間でリセット
——夜やるべきことがひと通りすんだら、何をして過ごしますか?
ワタナベさん:19時には夕食を済ませ、20時〜21時ごろまでに仕事のメールのやり取りなどを終えたら、あとは韓国ドラマを観て過ごすのが楽しみです。寝るまでの1時間くらいで、ちょうど1話分。大好きな日本酒をチビチビ飲みながらのドラマ鑑賞は、リラックスであり、自分に戻るリセットでもあります。
嫌なことがあっても、ひざに乗った猫をなでながら韓国ドラマを観てぐっすり眠ったら、たいていのことは忘れてしまいます(笑)。夜はしっかり寝て、家事や仕事は朝にするのが私には合っているみたいです。