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せわしない年末の養生レシピ。 薬膳料理家・山田奈美さんに教わる かぼちゃが主役のほっこり煮込み

せわしない年末の養生レシピ。 薬膳料理家・山田奈美さんに教わるかぼちゃが主役のほっこり煮込み

2024/12/12

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一年の中で最も日照時間が短く、夜が長い「冬至(とうじ)」には、昔からかぼちゃを食べる風習があります。

本来かぼちゃは夏が旬の食材ですが、長期保存が効くので冬の定番野菜として活用している人も多いのではないでしょうか。

「薬膳の視点では、かぼちゃはカラダをあたためる食材で、胃腸の消化吸収を促したり、体の冷えやだるさを改善したりする働きがあるとされています。何かとせわしないこの時期の“養生食材”としてオススメです」

そう教えてくれたのは、薬膳と発酵料理のスペシャリストである料理家の山田奈美さん。今回は、かぼちゃを主役にした冬にぴったりの養生レシピを教えていただきました。

インタビューした人

薬膳・発酵料理家

山田 奈美さん

国際中医薬膳師の資格を持ち、雑誌やwebなどで発酵食や薬膳レシピを多数提案。神奈川県・葉山の築90年超の古民家で行う発酵教室や和食薬膳教室などのワークショップも人気。著書も多く、近著に『二十四節気を愉しむ 季節の保存食』(マイナビ出版)、『からだが整う一汁一菜 なじみの食材と調味料でできるおうち薬膳』(主婦と生活社)などがある。

  1. 寒い季節にぴったりな、「かぼちゃと鶏肉の酒粕豆乳煮込み」の作り方
  2. 隠し味は“酒粕”。意外と使える活用術
  3. せわしない冬にこそ心がけたい食養生

01
寒い季節にぴったりな、「かぼちゃと鶏肉の酒粕豆乳煮込み」の作り方

日頃から旬の食材を意識して食べるようにしているという山田さん。

山田さん「意外かもしれませんが、大根や白菜といった冬が旬の野菜は、薬膳的にいうとカラダを冷やすとされているものが多いんです。カラダの冷えは中医学でいう『腎(じん※)』の不調につながります。その点、かぼちゃはカラダをあたためてくれるので、わが家の冬の食卓ではよく登場する野菜ですね」

(※中医学でいう「腎」は、「腎臓」だけを指すわけではありません。成長、発育、生殖などに関わる泌尿器や生殖器、免疫系、ホルモン系、中枢神経といった幅広い機能を指しています)

ちなみに、大根や白菜は薬膳的にはカラダを冷やすとされていますが、冬に食べてはいけない食材というわけではありません。しょうが、にら、唐辛子といったカラダをあたためる食材と意識的に一緒に摂るなど、組み合わせを工夫するとよいそうです。

というわけで、さっそく山田家の冬の定番野菜かぼちゃを使った、冬至にオススメの一品を教えてもらいます。

今回使う食材はこちら

かぼちゃと鶏肉の酒粕豆乳煮込み

材料&調理手順

材料(3人分)
鶏もも肉
1枚(約250g)
塩麹
大さじ1
かぼちゃ
1/4個
玉ねぎ
1/2個
にんにく
1かけ
にら
5本
油(米油、ごま油、なたね油など)
大さじ1
酒粕
大さじ1/2
大さじ1
1カップ
豆乳
100ml
少々
しょうゆ
適量
クコの実(あれば)
適量

下準備

鶏もも肉はあらかじめ塩麹につけておきます。できれば一晩、時間がなければ30分程度でもOK。調理を始める前に、塩麹を軽くぬぐい、食べやすい大きさに切ります。

  1. 玉ねぎは繊維に沿って薄切りに、かぼちゃは種を取って5mm幅の薄切りにします。同じくにんにくは薄切りに、にらは4㎝幅に切ります。
  2. 山田さん「大きなかぼちゃを切るのが怖いという方は、今回のように1/4サイズのものを使って、皮の方から切ると切りやすいですよ。酒粕がない場合は、代わりにみそを使い、味を調整してもいいと思います」
  3. 鍋を中火にかけて油を入れ、鶏肉の皮目を下にして並べます。皮に焼き色がつくまでしっかり焼きつけます。
  4. 皮目に焼き色がついたら裏返し、玉ねぎ、かぼちゃ、にんにくを加えて炒めます。玉ねぎがしんなりしたら、酒粕を加えて火を入れるように軽く炒め、酒と水を加えてふたをします。沸騰したら弱火にして15〜20分ほど煮込みます。
  5. 豆乳を加えて味見をし、塩、しょうゆで味を調えます。最後ににらを加えて火を止め、余熱でにらに火が通ったら完成!仕上げに水で戻したクコの実を散らすと彩りも豊かに。
  6. クコの実は精気を養うとされ、特に目や腎臓の調子を整えるのが得意な食材だと考えられています。中医学では「肝」や「腎」などを補うといわれます。

02
隠し味は“酒粕”。意外と使える活用術

豆乳ベースの汁にかぼちゃの甘さと鶏肉のうま味がゆき渡った、やさしい味わいの煮込み。薄切りのかぼちゃはさくさくと食べやすく、いわゆる和風の煮物とはまた違う食感が楽しめます。

山田さん「味つけのポイントは“酒粕”です。大さじ1程度入れるだけでもコクと若干のとろみが出て、うま味を底上げしてくれます。加熱することで独特の発酵臭もなくなるので、みそ汁にも加えられますし、わが家ではシチューやグラタンにもよく使いますよ」

今回の酒粕はペースト状の練り粕を使いましたが、板粕やバラ粕でも。右隣にあるのは手作りの塩麹。山田家では定番の調味料です。

酒粕はさまざまな使い道があります。山田さんが最近のお気に入りだと教えてくれたのは魚の漬け込み液にすること。

山田さん「酒粕大さじ2に塩をふたつまみ入れたものに、さけの切り身2切れを漬けました。酒粕が魚臭さを消して、うま味を引き立ててくれるので、焼くだけで十分おいしいです。ひと晩〜2日くらいは漬けておいてもOK。焦げやすいので、焼くときは漬け込み液をぬぐって焼いてください」

03
せわしない冬にこそ心がけたい食養生

そもそも山田さんが薬膳や発酵を軸にした食生活を始めたのは、25年ほど前。20代後半に冷え性や生理痛などの体調不良に日々悩まされ、それを改善したいと辿り着いたのが、食生活の見直しでした。

山田さん「始めた当初は、とにかくカラダを冷やす食材を摂らないと決めて、1年間徹底的に続けました。たとえば、薬膳的にカラダを冷やすきゅうりやトマトなどは、にんにくやしょうがをたっぷり入れたドレッシングを合わせたり、カラダをあたためてくれるしそをどっさりのせたり。にんじんやねぎも、カラダを温めてくれる食材の代表ですね。そうやって食べるものや調理法を工夫しながら、意識的に変えていったんです。その結果、不調も少しずつ改善していきました」

山田さんの経験をまとめた著書の一部

14年前に、現在の拠点としている築90年超の古民家に移り住み、ますます「手作りの食の楽しみが増した」と語る山田さん。最後に、何かとせわしない冬の時期に心がけている養生法を教えてもらいました。

山田さん「私の場合、冬は保存食作りが忙しくなる時期で、それが楽しみでもあるんです。その時間を大切にするためにも、仕事を詰め込みすぎず、基本的に“無理をしない”ことに決めています。食生活は、この時期だからと特別なことはしていませんが、今回ご紹介したかぼちゃと酒粕の組み合わせのように、カラダをあたためる食材とその働きを効果的に補ってくれる発酵食材を意識的に摂るのがオススメです」

  • 執筆/木下 美和 撮影/須古 恵 編集/長谷川 賢人
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