「昨日買ったしょうがチューブ、どこに入れたっけ?」「この小松菜、もうしおれてる……」。火にかけたフライパンを横目に調味料が見つからずイライラしたり、食材を無駄にしてしまったことに落胆したり……。冷蔵庫を前に毎日繰り返される、この無駄な時間とストレスから解放されたい!
そこで、整理収納コンサルタントの本多さおりさんを訪ねました。「生活重視、ラク優先」をかかげ、人の動き、心に合わせた収納の仕組みづくりを大切にしている本多さん。『片付けたくなる部屋づくり』をはじめ、ラクして続けられる暮らしのアイデアや整理収納術の書籍を多数出版されています。
実は「料理が苦手」という本多さん。特に献立や材料決め、味付けなど、「考える」作業が好きではないのだそう。そこから生まれたのが「考えずに使える」冷蔵庫収納です。食材や調味料を探す時間を短縮し、フードロスも防げる工夫について、本多さんの冷蔵庫を見せていただきながらお話を伺いました。
料理が得意ではない本多さんならではの、”考えない”料理の工夫も後日ご紹介します!
インタビューした人
整理収納コンサルタント
本多 さおりさん
「生活重視ラク優先」をモットーに、日々の暮らしを快適にする収納術を雑誌やwebで提案している。近著に『無印良品と365日』、『あるものを活かして愛着のある部屋に育てる』(ともに大和書房)などがある。
- 整理収納の第一歩は、定位置を決めることから
- 使いやすくするためのグループ化&フリースペース作り
- 棚板を制すものは、収納を制す!
- “目が合う”収納で、存在を忘れないようにする
- 買い物の失敗は、ただではすまさない
01
整理収納の第一歩は、定位置を決めることから
「冷蔵庫の整理は、定位置を決めることが大事」と本多さん。確かに、探す手間が省けそうですが、どうやって定位置を決めたらいいのでしょう?
「まずは、普段の食材や調味料の使い方を思い返してみましょう。特に『使う頻度が高いもの』『消費ペースが速いもの』に注目です。この二つの定位置を決めるだけでも探す手間がグッと減ります」
本多さんが、お客様のお宅に訪問して冷蔵庫を整理する際は、庫内の中身をすべて出して並べるといいます。一つずつ使用頻度を確かめ、選び出したものを取り出しやすい場所に置き直すのです。
「冷蔵室を開けたときにパッと目線がいき、取り出しやすいのは真ん中の段です。我が家の場合は、上から3段目ですね。この“特等席”に定番メンバーである納豆、めかぶ、キムチ、豆腐、卵を入れています」
納豆などが入ったトレーには、ラベルが貼ってあります。家族が見てわかるように、という目的もありますが、それ以上の意味もあります。
「ラベルは、この場所に、意図を持って収納しているという『意思表示』であり、『戒め』にするためです。急いでいるときなど、決めた場所以外に入れたくなるんですよね(笑)。そんなとき、ラベルを見ると『決めたところに収納しよう』と直せるんです。と言っても、ラベルが絶対、ということではありません。日々使うなかで、これはこっちの方がいいなと思ったら、どんどん定位置を変えています」
02
使いやすくするためのグループ化&フリースペース作り
定位置を決める際にポイントとなるのが、「グループ化」です。食材や飲み物を仲間分けすると、整理がしやすくなるのです。
たとえば、栄養ドリンクやパックジュースなどを「飲み切りサイズのドリンク」としてまとめる。朝食で使う食材は「朝食用セット」として集めておく。こうして分類できたら、取り出しやすさを考えて配置していきます。
本多さんは、お子さん用のパックジュースやヨーグルトをまとめて、最上段に収納しているんだとか。
「最上段は見上げる必要があって、どうしても取り出しにくい場所です。そこで、同じ種類のものを透明のケースに一列に並べることで、手前を見れば何があるかわかるようにしています。賞味期限順に並べて、補充するときは後ろから。このシンプルなルールで無駄なく使い切れます」
コンビニやスーパーのように“手前取り”を意識することで、奥のものが見えにくい最上段でも、フードロスが出にくくなるんです。
一方で、目線を下段に移すと、バターなどの「朝食セット」の横にはがらんとしたスペースが。なんとも贅沢な使い方なのでは……?
「ここはフリースペースです。夕食で使う食材を一時的に置いたり、残ったカレーやおでんを鍋ごと入れたりします。急なおすそわけなどの『いつもと違う日』の受け皿にもなってくれます。フリースペースがあるからこそ、収納全体がくずれずにすむんです」
03
棚板を制すものは、収納を制す!
本多さんの冷蔵室内をよくみると、3枚ある棚の高さがそれぞれ違うことがわかります。
「棚は購入時のままで使っている方が意外に多いのですが、収納するものに合わせてメリハリをつけるといいですよ。いっそ棚板を一枚抜くほうが便利になることもあります」
04
“目が合う”収納で、存在を忘れないようにする
ドアポケットや野菜室の奥から、記憶にないものがでてきた……なんてことはありませんか?使い忘れを防ぐため、「向こうからから『私はここにいるよ!』と語りかけてもらいたい」と話す本多さん。そのために、収納の“見える化”を心掛けています。
「あげ玉や青のりって、下手すると存在を忘れてしまうんですよね(笑)。それって見えないからだ、と思っていて。冷蔵庫を開けて、パッと目が合うようにしておけば、『そういえばいたな』って気づけるんです」
引き出しに深さがある野菜室や冷凍庫は、下の方の食材が埋もれてしまって、出しづらかったり、気づかないうちにダメになっていたり……なんてこともありますよね。
「そんなときは、収納の基本である『立てる』です。上から見て、どこに何があるのかわかるようになります。とくに野菜室の葉ものや、冷凍庫の食材は立てて保存するのがオススメです」
食材を冷凍したり、冷凍食品を使ったりすることも多いという本多さん。冷凍庫内には無印良品の「組み合わせて使える 冷凍庫用仕切板」を活用しているそうです。
「この仕切り板は、2枚を組み合わせてスライドさせることで、冷凍庫の奥行や収納するものに合わせてサイズ調整が可能です。食品を立てて収納しても倒れにくいため、冷凍庫を開けた時に、中身がひと目でわかります」
05
買い物の失敗は、ただではすまさない
整理や収納の工夫以外にも、買い物をする際に心がけていることがあると本多さんは言います。それは「過去の失敗から学ぶこと」。
「たとえば、大容量のマヨネーズを消費しきれなかった経験から、いくらコスパがよくても、“身の丈に合った”サイズを選ぶようになりました。『買い物の失敗は、ただではすまさない』をモットーに、失敗を見つめ直し、改善を繰り返しています」
使用頻度に応じた配置、グループ化、棚板の高さ調整、そして見える化まで。
一見、細かな工夫の積み重ねに見えますが、その根底には「自分たちの暮らしに合わせる」という本多さんの考え方があります。
大切なのは、自分や家族の暮らしをよく観察し、理解すること。そして、生活スタイルや習慣に合わせ、つねに変えていくこと。ときに失敗しながら、「どうすると暮らしやすいか?」を考え続けることが、快適な冷蔵庫、ひいては心地のよい暮らしにつながっていくのでしょう。
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