秋の味覚といえば、さんまやさけ、さつまいも、きのこなど、たくさんの食材がありますが、今回取り上げるのは「れんこん」です。
「下処理が面倒なイメージがあるかもしれませんが、しっかり洗えばすぐに調理に使えるので、実はハードルが低い食材ですよ」と話すのは、料理家の今井真実さん。娘さんの“れんこん好き”をきっかけに、頻繁にれんこんメニューを作るようになったのだと言います。
そんなれんこんは、きんぴらや筑前煮、はさみ焼きなどが定番料理ですが、こういった「れんこん料理」を作るときにしか買わないという人も多いのではないでしょうか?
そこで、れんこんを気軽においしく食べるコツや、魅力を引き出すレシピを今井さんに教えていただきました。

インタビューした人
料理家
今井 真実さん
「作った人が嬉しくなる新しい家庭料理」を軸に、雑誌、web媒体、企業広告をはじめ、多岐にわたるレシピを考案。著書に『毎日のあたらしい料理 いつもの食材に「驚き」のひとさじ』(KADOKAWA)、『いい日だった、と眠れるように 私のための私のごはん』(左右社)など。noteでも日々の料理について発信している。
- 子どもも大好き!「れんこんって、実はすごく甘い!」
- 皮むきもアク抜きもしなくてOK!
- シンプル食材でもしみじみおいしい、今井さんのれんこんレシピ
- 繰り返し作りたい。常備菜にもなるれんこんレシピ
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子どもも大好き!「れんこんって、実はすごく甘い!」

普段から旬の食材を使うことを大事にしているという今井さん。秋から冬にかけて旬のれんこんも、今井さんのご家庭ではよく登場する食材の一つです。
今井さん「娘は本当にれんこんが大好き!食材のおいしさを活かそうと味付けをシンプルにしていったら、『れんこんってこんなに甘いんだ!』と私自身も発見がありました。今でも、れんこん料理を作って味見するたびに、そのねっとりとした甘さに驚くことがよくあります」
れんこんをはじめ、旬の食材はおいしいのはもちろん、値段が手頃なこともその魅力。れんこんの時期になると、作るものが決まっていなくても「とりあえずれんこんをカゴに入れ、メニューはあとから考える」のだそうです。
今井さん「旬の食材が食卓に並ぶと、それだけでイベント感がありますし、食事が楽しくなります。今は通年で手に入る食材が多く、旬がわかりにくくなっていますが、スーパーで安く売っていたり、店頭にたくさん陳列されているものは旬であることが多いです。ぜひチェックしてみてください」
02
皮むきもアク抜きもしなくてOK!

そんなれんこんですが、皮をむいたり、アク抜きをしたりと、調理に手間がかかるイメージを持っている人も多いのでは? ですが、実は皮むきやアク抜きをしなくてもおいしく食べられるんです!
今井さん「私にとって、れんこんはスピード食材。しっかり洗えば、下処理なしで調理に使えます。味をより染み込ませたいときは皮をむいたり、変色を防いで色よく仕上げたいときは酢水にさらしたりするといいのですが、家庭でさっと調理する際は省いてもよいと思います。皮つきのまま焼いてお塩をかけるだけでも、皮の香ばしさと甘みが引き立っておいしいですよ」
れんこんは調理の仕方によって、さまざまな味や食感が楽しめるのも魅力です。
例えば、切り方。薄くスライスしてさっと炒めれば、シャキシャキ感が楽しめますし、ちょっと厚めの輪切りにしてじっくり揚げ焼きにすれば、ホクホク感が味わえます。細切りにして炒めれば、シャキホク感のあるポテトのような食べ方もできます。
今井さん「切るときのコツは、味や仕上がりの“目標”を考えること。切り方次第で食感や味わいが変わりますからね。あとは食べ方からイメージするのもオススメです。お酒のおつまみにするなら小さめに、メインにするなら大ぶりに切るといった感じです」

れんこんは「節」によっても味に違いがあります。スーパーで売っているものをよく見ると、形がそれぞれ違うのがわかります。
細く、先端にとがった芽があるのが若い節で、瑞々しくシャキシャキしていて、サラダなどにぴったり。逆に、太くてどっしりとしたものは長く成長した節なので、粘りと甘みが強く、煮物などに向いています。

また、傷んではいないものの、茶色っぽくなってしまったれんこんは、濃い味付けで仕上げたり、カレーやお味噌汁に入れたりするとおいしく食べきれるそうです。
今井さん「中途半端に余ってしまったときは、スライスしてレンジでチンし、お醤油とかつお節をかけるだけでも一品になります。気負わずに試してみてください」
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シンプル食材でもしみじみおいしい、今井さんのれんこんレシピ
ここからは、今井さんに教えていただいた、れんこんのおいしさをたっぷり味わえるレシピをご紹介します!

れんこんとスペアリブの塩スープ
材料&調理手順
材料(2〜3人分)
- れんこん
- 200g
- 豚スペアリブ
- 300g
- にんにく
- 1かけ
- 水
- 800ml
- 塩
- 小さじ1
- 黒こしょう(好みで)
- 適量

- れんこんはよく洗い、皮ごと3cm長さほどの食べやすい大きさに乱切りする。スペアリブは骨と肉の間に包丁を入れて切り離し、肉の部分を3cmほどの食べやすい大きさに切る(骨に肉が残っても大丈夫です)。にんにくは包丁の腹などでつぶす。
- スペアリブの骨と肉の両方を鍋に入れて、かぶるほどの水(分量外)を注ぎ、沸騰させる。アクが出てきたらザルにあげ、ぬるま湯で洗う。
- 鍋をきれいに洗い、(2)のスペアリブ、(1)のれんこん、にんにく、塩、水を入れて、中火で沸騰させる。
- 沸騰したら、ふたをして火を弱め、鍋の中が静かにふつふつと煮立っているぐらいの火加減で約40分煮る。器に盛り、好みで黒こしょうをふる。





今井さん「味見をしたら、おだしの甘みにきっと驚くはず!れんこんの甘さをしっかりと感じられる一品です。味付けは塩だけですが、スープは深いおいしさに仕上がりますよ」
ちなみに、スペアリブは、手羽元など、ほかのお肉に変えても作れます。骨付きだと、よりうま味が出るのでオススメ。じっくり煮込んでいるので、骨についたお肉もほろほろとはがれます。

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繰り返し作りたい。常備菜にもなるれんこんレシピ
今井さんが普段から作っているれんこん料理は、まだまだあります。ここでは、その一部をご紹介します。
まずは、れんこんの香ばしさが楽しめる「れんこんとルッコラの塩きんぴら」。ルッコラのごまのような風味が、れんこんによく合うのだとか。
今井さん「れんこん300gを皮ごと縦にスライスして細切りにし、軽く水にさらします。フライパンにごま油大さじ1を熱し、香ばしく焦げ目がつくまでしばらく放っておき、時折、混ぜ返してください。塩をざっと振り、最後にみじん切りにしたルッコラ1束をどさっと入れて和え、黒こしょうをふれば完成です。野菜だけとは思えない満足感ですよ」
さっと一品を作るなら、「胡麻酢れんこん」もオススメ。れんこんの甘さが際立つ、今井家の常備菜だそう。
今井さん「れんこんは皮ごと薄切りに。さっと塩水でゆでて、ザルにあげ、酢醤油とごまで和えるだけ。炒りごまで作ることもありますが、すりごまを使うと、よりれんこんとなじみます。お弁当のおかずにもぴったりです」

調理の仕方によっていろいろな味が楽しめるれんこん。下処理が面倒なイメージを持つ人も多いですが、実は手軽においしく食べられることがわかりました。
今井さんが「味見するたびに驚きがあるんです。料理の主役にも脇役にもなれるところがおもしろいですね」と言うように、まだ知らないおいしさがきっとあるはず。
れんこん好きはもちろん、「たまにしか買わないな…」という人も、今井さんに教えていただいたコツを参考に、今年はれんこん料理にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?