干ししいたけを戻して煮て、錦糸卵を作って、絹さやをゆでて、ひとつひとつ丁寧に調理してきれいに盛りつけるちらし寿司。見た目も華やかで特別感がありますが、もっと日常的に楽しみたい。
以前、料理人の稲田俊輔さんにご提案いただき、その手軽さとおいしさに感動した具材3品のみで作る「三品鍋」。もしかして、具材3品の考え方はちらし寿司にも応用できるのでは?
さっそく稲田さんに相談したところ、”混ぜるだけ”の「三品ちらし」が完成しました。

インタビューした人
稲田 俊輔さん
料理人、飲食店プロデューサー。南インド料理店「エリックサウス」総料理長。鹿児島県生まれ。京都大学在学中より料理修業と並行して音楽家を志すも、飲料メーカー勤務を経て友人とともに円相フードサービスを設立し、料理の道に専念。インド料理のほか、和食、フレンチ、洋食などさまざまなジャンルのメニュー監修や店舗プロデュースを手掛ける。著書に『ミニマル料理:最小限の材料で最大のおいしさを手に入れる現代のレシピ85』(柴田書店)、『現代調理道具論 おいしさ・美しさ・楽しさを最大化する』(講談社)など多数。
- 酢飯と具材を混ぜるだけ。簡単「三品ちらし」
- どんな具材でも受け止めてくれる、おおらかな「酢飯」
- りんご酢、玄米黒酢。「酢」で遊ぶのも楽しい
01
酢飯と具材を混ぜるだけ。簡単「三品ちらし」

今回、AJINOMOTO PARK編集部が稲田さんにお願いしたのは、「酢飯と具材3品でちらし寿司を2種類作ってください」ということのみ。 どんな具材が用意されているのか?ドキドキしながら稲田さんの元を訪れました。 編集部の私たちも驚いた、稲田さん流の「新しいちらし寿司」の作り方をご紹介します。
──さっそくですが、今回ご紹介いただく具材を教えてください。
稲田さん:まず1品は、<まぐろの漬け、アボカド、きゅうり>、もう1品は、<エビ、ブロッコリー、炒り卵>の組み合わせです。私は、ちらし寿司は、イタリアやフランスなどヨーロッパで親しまれている「ライスサラダ」のようなものだと思っています。だから具材はサラダにできるものならなんでも合うと思い、今回はこの組み合わせにしました。
──ちらし寿司というと和のイメージがありますが、洋風の具材でもいいんですね。下ごしらえはしますか?
稲田さん:基本的には手をかける必要はありません。まぐろだけ先に醤油とからめていますが、アボカドは市販の冷凍品をそのまま使います。きゅうりは食感と見た目を意識して縞目にむきましたが、お好みで大丈夫ですよ。 ブロッコリーは塩ゆでにして食べやすい大きさに切っただけですし、炒り卵も、卵1つに対して塩ひとつまみと砂糖小さじ1杯を加えたシンプルなもの。卵は少し甘めの味付けが酢飯によく合うと思います。
──ハードルが高く感じていたちらし寿司ですが、具材3品なら気負わず作れそうです。具材を組み合わせるときのコツはありますか?
稲田さん:具材は、「味の主役になるもの(まぐろの漬けやエビなど)」、「食感のアクセントになるもの(きゅうりやブロッコリーなど)」「脂っけがあるもの(アボカドや炒り卵など)」を組み合わせるのがコツです。食感を活かすために、大きめにカットするといいですよ。
──次に作り方を教えてください。
稲田さん:まず、大き目のボウルに好みのレシピで酢飯を作ります。具材をすべて入れて、あとは混ぜ合わせるだけで完成です。


──味付けもシンプルだし、「三品鍋」以上に簡単ですね!
稲田さん:具材によってはしっかりと味を付けているし、お米にも味が付いていますからね。酢飯ってとても懐が深いんです。酢飯の味わいが全体をまとめながら、それぞれの素材の味も引き立ててくれます。盛り付けるときは、形がいい具材を上にもってくると、見映えがよくなりますよ。

──具材が大きめで、想像していたちらし寿司と違いました!
稲田さん:これ一品で食卓の主役になるちらし寿司をイメージしています。具材がゴロゴロしていて大きいと、見た目にも華やかで食べ応えもあって、満足度も高い。2合の酢飯に対し、具材はどれも100gずつでそろえています。割と多めで贅沢な分量にすることで、“ごちそう感“を演出しました。

02
どんな具材でも受け止めてくれる、おおらかな「酢飯」

──ほかに、オススメの具材はありますか?
稲田さん:魚介に限らずにロースハムや生ハム、チャーシューを主役にしてもいいですね。渋めのちらし寿司にするなら、お稲荷さん用の甘く煮た揚げを大きめにカットして使ってもいいかもしれません。混ぜ稲荷のような感覚です。
野菜はシャキシャキとした食感や爽やかさをプラスできるものを選びたいですね。レタスもいいし、さっとボイルしたキャベツもおいしいと思います。
──稲田さんが試しておいしかった組み合わせはありますか?
稲田さん:冷蔵庫にあったブルーチーズとクリームチーズ、カマンベールチーズなど、チーズを数種類と、そこにロースハムを入れて、薬味ねぎを刻んでどっさりと加えました。なかなか最高でしたよ。チーズと酢飯の組み合わせが意外と合うのでぜひ試してみてください。
──具材を選ぶとき、組み合わせるときのインスピレーションはどこからきていますか?
稲田さん:回転寿司を思い出してみてください。酢飯にハンバーグや天ぷらなどびっくりするようなネタがのっていますが、どれも案外おいしい。あれを見ていると、もうノールールなんだなと。酢飯はなんでも受け止めてくれるんです。懐の深さを再確認しました。
もう一つ参考になるのが、デパ地下のお惣菜コーナーやサラダ専門店。並んでいるサラダ類はだいたい2〜3つの食材で作られたものが多いので、その組み合わせを参考にするという手もあります。色合いを考えながら3品を選ぶと、自然とバランスよく仕上がると思います。
──なるほど!たしかに合いそうです。ほかに試してみたい組み合わせはありますか?
稲田さん:フルーツを使ってみたいですね。例えば、グレープフルーツに、にんじん、ちょっといいロースハムなんかおいしそうですよね。あとは筑前煮もいいかもしれませんね。ゴロゴロといろいろな具材が入っているし、食感も変化があって、おばあちゃんが作る五目ちらしのような感じになりそうです。
03
りんご酢、玄米黒酢。「酢」で遊ぶのも楽しい

──稲田さんは、普段ちらし寿司を作ることはありますか?
稲田さん:いわゆる「ちらし寿司」は作る機会がないですが、カツオやまぐろなどの赤身を酢飯にのせた伊勢の郷土料理「手こね寿司」をたまに作ります。今回紹介したような、混ぜごはんスタイルのちらし寿司も、ライスサラダ感覚で作りますね。今回は「三品ちらし」というお題をもらって作りましたが、僕自身、同じようなメニューを作っていたことに気づかされました。
──三品ちらしはどんな酢飯でもOKとのことですが、稲田さん流の酢飯の作り方を教えてください。
稲田さん:まず米酢と砂糖、塩、うま味調味料「味の素®」を混ぜて寿司酢を作り、ボウルや飯台に入れた炊き立てのご飯に回しかけます(※詳しい分量は記事最後で紹介しています)。 米酢が基本ですが、具材に合わせてりんご酢や玄米黒酢を使うこともあります。チーズやハムなど、洋っぽい食材にはりんご酢を合わせるのもおもしろいです。玄米黒酢はちょっと高級ですが、まろやかでコクがあって抜群においしくなりますよ。


──シンプルな具材だからこそ、酢が変わるとまた違った味わいが楽しめそうですね!
稲田さん:具材の組み合わせだけでなく、酢でも味に変化が出るので本当に楽しみ方は無限大です。普段のごはんでもいいですし、ホームパーティはもちろん、お花見や運動会でも喜ばれそうですね。いろいろな組み合わせを楽しみながら作ってみてください。
稲田さんに教えていただいた「三品ちらし」を、AJINOMOTO PARKコミュニティ「味のもト~ク」のメンバーと編集部員がさっそくお試し。どんな組み合わせができたのか?こちらの記事で紹介しています。
【稲田さんの酢飯レシピ】
材料&調理手順
材料(2合分)
- 温かいごはん
- 2合
- A米酢
- 60g
- A砂糖
- 20g
- A塩
- 6g(約小さじ1)
- Aうま味調味料「味の素®」
- 0.4g(約4ふり)
- ごはんが温かいうちに、混ぜ合わせたAを加え、お米にツヤが出るまで混ぜる。