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具材が3品、可能性は無限大。稲田俊輔流「三品鍋」の楽しみ方

具材が3品、可能性は無限大。稲田俊輔流「三品鍋」の楽しみ方

2024/11/07

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具材は必ず、3品のみ。あとはおいしいだしがあれば。

そんな「三品鍋」を、料理人の稲田俊輔さんは毎日のように楽しんでいるそう。お肉や野菜、豆腐など、バランスよく3品を選び、きれいなだし汁に敬意を払いながら調理していく。その組み合わせの可能性と楽しさは、想像以上に無限大でした。

稲田さんを魅了する三品鍋、その作り方や極意を伝授していただきます。

インタビューした人

稲田 俊輔さん

料理人、飲食店プロデューサー。南インド料理店「エリックサウス」総料理長。鹿児島県生まれ。京都大学在学中より料理修業と並行して音楽家を志すも、飲料メーカー勤務を経て友人とともに円相フードサービスを設立し、料理の道に専念。インド料理のほか、和食、フレンチ、洋食などさまざまなジャンルのメニュー監修や店舗プロデュースを手掛ける。著書に『ミニマル料理:最小限の材料で最大のおいしさを手に入れる現代のレシピ85』(柴田書店)、『現代調理道具論 おいしさ・美しさ・楽しさを最大化する』(講談社)など多数。

  1. まずは実践から。稲田さん直伝!三品鍋の作り方
  2. だし汁も具材も可能性は無限大。稲田流・組み合わせの極意
  3. 偶然生まれた三品鍋が、“鍋料理は飽きる”問題の救世主に
  4. 三品鍋があれば、栄養バランスも◎。食卓もにぎやかに

01
まずは実践から。稲田さん直伝!三品鍋の作り方

——さっそくですが、今日作っていただく三品鍋について教えてください。

稲田さん:具材は、鶏もも肉(150〜200g)、豆腐(1丁)、三つ葉(1袋)。

だし汁は、水(600cc)と昆布(6g)、薄口醤油(30g)で作ります。これは2人分の分量ですが、水100に対して、昆布1、薄口醤油5の割合が黄金比。この割合さえ守れば、量を変えてもおいしいだし汁ができます。

うま味がよく出る鶏肉などの素材は、水分の重さに対して25%以上入れると良いバランスだとか。今回は水+醤油で630gなので、鶏肉は160g以上が目安

稲田さん:まず鍋に昆布と水を入れて昆布だしを作ります。事前に水出しで仕込んでおいても、時間がなければすぐ火にかけても大丈夫です。

だし汁に醤油で薄味を付け、食べやすい大きさに切った鶏もも肉を鍋に入れたら、火にかけます。鶏肉に下処理は不要です。グラグラと煮立たない程度の火で煮込みます。

三品鍋は、いかにだし汁を濁らせず、雑味のない仕上がりにできるかがポイントです。

うま味がよく出る鶏肉などの素材は、水分の重さに対して25%以上入れると良いバランスだとか。今回は水+醤油で630gなので、鶏肉は160g以上が目安

稲田さん:鶏肉はアクが出るので、きれいに取り除いてください。 沸騰する直前になったら昆布を取り出しましょう、とよく言われますが、この鶏だし汁は昆布の風味が悪目立ちすることもないので、昆布は入れたままで煮て、あえて生かしたいと思います。

「鍋の底に昆布が入っていると、湯豆腐みたいで、食べるときもテンションがあがりますね」と稲田さん

稲田さん:あとは、切った豆腐と三つ葉を入れるだけ。ただ、豆腐は煮え立ち始めがおいしいので、まずは半分を。豆腐の中心が温まったくらいがちょうどいい食べごろです。残りの豆腐は、食べながら入れてください。

稲田さん:あとは三つ葉を添えて完成です。三つ葉は生でも食べられるので、しゃぶしゃぶする程度で大丈夫。火は具材が動かない程度の弱火で、三つ葉や豆腐は足しながら食べます。

稲田さん:豆腐と鶏からも水分が出るので、仕上がりのだし汁の濃さはお吸い物と同じくらいになります。このおいしいだし汁を飲むために三品鍋をつくっている、と言ってもいいです。

稲田さん:せっかくのおいしいだし汁ですが、僕は雑炊で〆ません。雑炊までいこうと思うと、だし汁を飲むのを遠慮してしまうから。それに惑わされるぐらいだったら好きなだけだし汁を最後まで飲みたい。

強いて言うなら、白米や炊き込みご飯にかけてだし茶漬けにするのはオススメですよ。

02
だし汁も具材も可能性は無限大。稲田流・組み合わせの極意

——三品鍋の具材は、どうやって選びますか?

稲田さん: 僕は使う3品を「鍋下、鍋中、鍋上」と呼んでいます。「鍋下」は、豆腐のように食べ飽きない食材。「鍋中」は、動物性たんぱく質でだし汁にうま味を出してくれるような食材。「鍋上」は、色合いも兼ねて葉野菜で香りを添えるものが多いです。

ーー SNSでも日々の三品鍋をアップされていますが、具材の組み合わせはどんな風に考えていますか?

稲田さん: まず決めるのは「鍋中」です。だし汁にうま味を出すといえば鶏肉が優秀。今日は鶏もも肉を使いましたが、手羽先もいいだしが出るのでおすすめです。豚肉、牛肉、魚介も鍋中になります。

次に「鍋下」を決めます。王様はなんといっても豆腐。「鍋中」がえびや貝のように脂っ気のないときは、厚揚げやがんもどきもアリです。豆腐でなければうどんもいいですが、あくまで「うどんすき」のイメージで量は控えめに入れるのがポイントです。 。

野菜が「鍋下」になることもあります。たとえば、僕にとって大根は「鍋下」の扱い。特に冬場に「鍋中」でぶりのアラを使うときは大根。8mmほどの薄い輪切りにして鍋底に敷き詰めています。

そして「鍋上」の基本は青菜かねぎです。僕は青ねぎをザクザクとたっぷり入れるのが好みです。「鍋上」の野菜は「さっと火を通して半生くらい」で食べてもおいしいのが合いますね。小松菜、水菜、春菊、レタスの外葉もオススメです。

——飲みたくなるだし汁から具材を決めることもありますか?

稲田さん: よい決め方だと思います。例えば、鰹だしと醤油とみりんを8対1対1で鴨南蛮風に仕立て、焼き豆腐と牛肉で肉豆腐鍋もおいしいですね。

八丁味噌をベースに、牡蠣と隠し味程度のすりおろしたしょうがもいいですね。そんなときは「鍋中」をうどんにして、「鍋上」は名古屋の食文化から学んで青ねぎをたっぷりと…。

3品というルールがあるからこそ、ゲーム感覚で楽しく組み合わせを考えられるんですよ。

03
偶然生まれた三品鍋が、“鍋料理は飽きる”問題の救世主に

——キムチ鍋、豆乳鍋など、さまざまな鍋がありますが、稲田さんが、スープの味ではなく、具材を変えることに行き着いた理由は何ですか?

稲田さん: やっぱり、“鍋は飽きる”という問題です。冬場になったら、大皿に肉や魚介、白菜、キノコ、豆腐、春菊、ねぎを並べて、冷蔵庫に残っている食材まで入れちゃう。そういう鍋って、シーズンの最初が一番おいしい気がするんです。でも、繰り返すうちに不思議とテンションが下がってしまったり。

——そこから「三品鍋」にたどり着くんですね。

稲田さん: 最初は、シンプルに湯豆腐を食べたくなったのがきっかけでした。ただ、そこにも“飽き”の問題が来ます。それならば、だし汁だけでもお酒のアテになるくらいのおいしさを求めてみたら、「いっそ具材を絞ったほうがいいんじゃないか」と天啓が降りまして(笑)。絞るほうが、食材の選び方や調理法で味はむしろ大きく変わるからです。

やがて「具材は3品まで」というルールを見出し、さらには「三品鍋」とキラーワードを決めてみたら、見事に毎日のように試しながら食べたくなったわけです。今では三品鍋は食べ飽きない「日常の鍋」になれると思って作り続けています。

04
三品鍋があれば、栄養バランスも◎。食卓もにぎやかに

——ちなみに、三品鍋にはどんな料理を合わせますか?

稲田さん: 僕は、シンプルな炊き込みご飯や、自家製なめ茸と白米を合わせたり、あとは酢の物を組み合わせることも多いです。

極端に言えば、三品鍋は具だくさんな味噌汁と同じ立ち位置だと考えてみてはどうでしょう。見方を変えれば、ふだんの味噌汁だって三品鍋のスタイルで、そのまま食卓に出せば、堂々とした一品のはずです。

みなさん、毎日の食事づくりは大変ですよね。それを証明するためにも、味噌汁的な三品鍋を食卓に並べてみて、あとは出来合いのお惣菜を添えれば、案外とサマになりますよ。

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  • 執筆/高野 瞳 撮影/須古 恵 編集/長谷川 賢人
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