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“食”に対する興味を育むには?ジュニア料理選手権の強豪校に聞く、子どもが料理を好きになるコツ

“食”に対する興味を育むには?ジュニア料理選手権の強豪校に聞く、子どもが料理を好きになるコツ

2024/05/16

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子どもに料理を作る楽しさを教えたいけれど、何から始めたら良いかわからない……といった悩みを抱えていませんか?
 
2012年より味の素社は雑誌『オレンジページ』と共同で、中高生に料理をする楽しみや感動を体験してもらうことを目的に、料理コンテスト「ジュニア料理選手権」を開催しています。募集部門は、テーマに従って自分でレシピを考えて作る「オリジナルレシピ部門」と、既存のレシピを自分で作る「トライアル部門」の2つ。毎年たくさんの応募が集まっています。

「ジュニア料理選手権」出場校は、どのように子どもたちに料理をする楽しさを教えているのでしょうか?その教えには、私たちの日常にもつながる「食育のヒント」があるはずです。

そこで、2019年から「ジュニア料理選手権」に出場し、第11回ジュニア料理選手権にて「特別学校賞」を受賞した関西大学第一中学校を訪問。授業を通して伝えていることや気をつけていることなどをお聞きしました。

インタビューした人

小阪 有里さん

関西大学第一中学校の1年生・2年生、関西大学第一高校の1年生の家庭科を担当。

インタビューした人

谷尻 晶子さん

関西大学第一中学校の1年生・2年生の家庭科を担当。高校生のキャリア教育に関する授業も受け持っている。

  1. 料理のおいしさ、食べてもらえる嬉しさに気づいてほしい
  2. チーム内で自由に調理し、自ら考えて行動する力を養う
  3. 「簡単においしく作れるんだ!」という成功体験を

01
料理のおいしさ、食べてもらえる嬉しさに気づいてほしい

──どのような経緯で、「ジュニア料理選手権」に出場されたのでしょうか。

小阪さん:約4年前、新型コロナウイルスの流行で、調理実習ができなくなってしまったんです。

そこで、生徒全員に対し、夏休みの課題として各家庭で料理に取り組んでもらおうと考えていたのですが、「料理をしてきてください」だけではつまらないと感じていました。いろいろと調べる中で見つけたのが「ジュニア料理選手権」の募集でした。

2023年の募集テーマである「想いを伝える、しあわせごはん」など、テーマに基づいたレシピ作りを実践してみることで、料理を普段している人の想いに触れるきっかけになると思ったんです。

レシピを試すときにも、家族などに食べてもらって「おいしい!」と言ってもらえたら、「自分が考えて作ったものを食べてもらえることの嬉しさ」も育まれますよね。

あとは、コンテストの良さでもありますが、入賞すれば賞品をもらえるので、取り組むモチベーションにもつながりやすいと感じました。

──初めて料理をする生徒も中にはいるかと思います。自分でレシピを考えるのはハードルが高いように感じますが、普段どのように指導されているのでしょうか?

小阪さん:募集テーマをもとに、まずは「誰に、どんな料理を食べさせたいのか」を思い浮かべてからレシピを考えてみましょう、と伝えています。

たとえば、「仕事をしているお母さんがいつも疲れて帰ってくるから、スタミナが出るものを作ってあげたい」と考えたり、おじいちゃんとおばあちゃんの好物を思い浮かべてアレンジしたり、といった生徒もいましたね。

たしかに、料理経験の少ない子どもが、いきなり自分でレシピを考えることは難しいものです。そういうときには「完成している料理に何かを足す・引くで考えてみたらどう?」と提案したり、「味をちょっと変えてみたりしたら?」などとアドバイスしています。

02
チーム内で自由に調理し、自ら考えて行動する力を養う

──調理実習をする上で、意識されていることはあるのでしょうか?

小阪さん:チームワークですね。料理を通じて「この子が困っているから助けてあげよう」「次にこの料理を作るから、先回りして動こう」など想像して行動できる力を養ってもらうことを大切にしています。

私たちが調理の技術を教えようとしなくても、生徒は料理上手な人を見ると「こんなにできる子がいるんだ、もっと頑張らないと」と刺激を受けるようです。

谷尻さん:調理の技術に関しては、家庭科の教科書にQRコードが掲載されていて、自分のタイミングで生徒が動画で学べるようになっているんです。授業だけでは教えきれないため、調理の技術が心配な生徒は、事前に動画を見て学ぶといいよとアドバイスしています。

──ジュニア料理選手権に参加されて、料理に対する生徒の変化はありましたか?

小阪さん:生徒の様子を見ていると、普段は料理をしない子どもでも「この料理を作ってみたけれど、どうかな?」「あの調味料を足したら、おいしくなるかな」と、親子でコミュニケーションを取る機会が増えているように感じます。「楽しかった」という声もよく耳にしますね。

──料理をもっと好きになってもらうために、工夫をされていることはありますか?

谷尻さん:褒めることですね。失敗した時でも「これはだめだったけど、これはできたね」とポジティブに伝えるようにしています。

他にも「自由に調理していいよ」と伝えることで、自分たちで考えながら料理をできるようにしています。基本のやり方は見せるけど「野菜は必ずこのように切ってください」と教えることはしません。

以前、授業でホットドッグを作った時も、ウインナーはボイルしても良いし、焼いても良いし、切込みを入れて見栄えを良くしてもいいよと伝えていました。そのほうが、チームの中でコミュニケーションを取りながら、ワイワイと楽しそうに調理をしているんですよね。

小阪さん:パンに挟むキャベツを炒めるか、炒めないか、カレー味をつけるか、つけないかなどの判断もすべて子どもたちに任せましたね。

03
「簡単においしく作れるんだ!」という成功体験を

──調理実習で作るレシピは、どのような基準で選ばれているのでしょうか?

小阪さん:誰でもおいしく作れるレシピを選んでいます。生徒たちには、料理を通じて成功体験を積んでほしい。料理は難しいものではなく、簡単に見栄え良く作れるのだと体感してくれたら嬉しいですね。

──お家でも簡単に作れる料理として、どんなものを実習で作りましたか?

谷尻さん:中学生の調理実習で作ったのは、みたらし団子ですね。「餡って、簡単に作れるんだ!」と、楽しそうでした。

小阪さん:高校生の調理実習では、めんつゆを使った牛丼や、カレーのルーを使ったキーマカレーなどを作りました。スパイスを調合して作れば味も変化するよ、と説明したら「僕、お家で作ってみました!」と報告してくれた生徒もいて、より料理に興味を持ってくれましたね。

もちろん、かつお節やこんぶで「だし」を取るところから教えることも大切ですが、大人になった時に毎回丁寧に食事を作れるかというと、そうではないですよね。一番役に立つのは、簡単に作れる料理。だからこそ、将来自立した時に使えるレシピを1、2品知っておくと便利です。

──「簡単に作れるんだ」と思うと、どんどん料理に対する興味が湧きそうですね。

小阪さん:結局、人間のカラダは自分が食べたもので作られていますよね。子どもの頃は家庭内で誰かに作ってもらって食事をする機会が多いですが、大人になったら自分で食事を作らなければいけません。だからこそ、子どもの頃に食の楽しさを学ぶことは大切ではないでしょうか。

食べることが楽しい、自分で作ったものを食べるメリットにもっと気づいてもらえたら嬉しいですね。

  • 執筆・撮影/大畑 朋子 編集/長谷川 賢人
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