毎年、多くの人を悩ませる花粉症。マスクやメガネをつけるなど、どんなに対策をしても防ぎきれないのがつらいところです。
そこで取り入れたいのが、カラダの内側からできる花粉症対策。東洋医学では、日々の食事で体を整える「食養生」を大切にしており、花粉症にもその考え方は有効なのだとか。味の素社の研究員で漢方専門家の曹(そう)さんに、東洋医学視点での花粉症対策を伺いました。

インタビューした人
食品研究所 ウェルネスソリューション開発センター 情報開発グループ(医学博士)
曹 利麗さん
- そもそも花粉症を東洋医学で考えると?
- 花粉症対策に!取り入れたい食材をご紹介
- 「食」だけでなく、生活リズムを整えて
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そもそも花粉症を東洋医学で考えると?

東洋医学の特徴は、カラダの不調を引き起こす“病因”を分析した上で、その病因を取り除くことを目的に総合的に治していくこと。対して、西洋医学は頭痛が起きたら痛みをなくすためのアプローチをする、いわゆる症状に対する治療が一般的で、そこが大きく異なるポイントです。
では、花粉症は東洋医学ではどのように考えるのでしょうか。
曹さん「花粉症の代表的な症状といえば、鼻水やくしゃみ、目がかゆくなるといったもの。これを東洋医学では、ウイルスや細菌など外的要因から体を守ろうとする力の『衛気(えき)※』が弱まっているときに、症状を起こす原因となる『邪気(じゃき)』として花粉が体内に入り、それを体外に出そうとする反応だと考えます。衛気が弱まってしまう原因は人それぞれですが、季節に応じた養生のポイントがあるので、今回はそれを中心にお伝えできればと思います」
(※衛気は、体の中と表を温めたり、ばい菌やウィルスなどから体を守る力のこと)
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花粉症対策に!取り入れたい食材をご紹介
東洋医学でいう「薬食同源」、日本では「医食同源」とも呼ばれますが、自分の体調に合わせた食材を摂ることで体の調子を整えられる、という考え方が「食養生」です。そこで、花粉症対策にも効果的とされる食材と、「AJINOMOTO PARK」からオススメのレシピを教えていただきました!
「肝」を強くする食材
曹さん「特に春は、東洋医学でいう五臓(全身を肝・心・脾・肺・腎の5つに分類する考え方)のうち、解毒をおこなう機能を担う『肝』というカテゴリが活発になります。冬に蓄えたものを外に出すことが大切な春の季節に『肝』が弱まってしまうと、花粉症の症状がより強く出てしまうこともあります。『肝』には、肝臓だけでなく、自律神経なども含まれています。花粉症の方は、『肝』の働きを補う食材を意識的に摂るといいですよ」
・オススメ食材&レシピ
豚肉、キャベツ、にんじん、ごぼう、れんこんなどが、「肝」を強くするのにオススメの食材です。
曹さん「野菜をたっぷりと温かく食べられるレシピです。キャベツ、パセリなどの野菜には「肝」の解毒機能を助ける力があるとされています」
曹さん「セロリ、れんこん、たまねぎ、かぶは『肝』の解毒に効率のよい食材としてオススメです。たまねぎは体の芯から温めることができるので、副菜としてオススメの一品。ぜひ、試してみてください」
「肺」を強くする食材
花粉症に影響を与えるのは「肝」だけではありません。
曹さん「口や鼻などの呼吸器系が、もっとも花粉からの刺激を受けます。そのため、東洋医学でいう五臓の『肺』、つまり呼吸にまつわるグループ全般を強くする食材がオススメです。『肺』を養う食材は白いものが多いのも特徴的です」
・オススメ食材&レシピ
きのこ類、もやし、豆腐、菊の花、白きくらげなどが、「肺」を強くするのにオススメの食材です。
曹さん「もやしのような白い色の食材は「肺」の陰を潤し、衛気の源をつくってくれる力があります。また、ねぎには体を温め、衛気を強くする効果も。豚肉と卵が入っているので、たんぱく質も効率的に補給できますよ」
体を温める食材
曹さん「春はまだ風が冷たく、朝晩は冷え込むことも多いので、体を温める食材も積極的に摂りたいですね。花粉症に限らず、冷えは『気血』(きけつ)のめぐりを悪くするので万病のもとです。特に、さらっとした鼻水が止まらないといった症状がある人はカラダが冷えがちな方なので、熱や温の特徴を持つ食材(カラダの衛気を補える食材)を摂るようにするとよいですよ」
・オススメ食材&レシピ
しょうが、ニラ、鶏肉、えびなどが、オススメ食材です。
曹さん「鶏肉、長ねぎ、にんにく、しょうがは体を温め、衛気を強めてくれます。とくに鶏肉は良質なたんぱく質でもあるので、積極的に摂りたい食材です」

ちなみに、これらは以前に曹さんへお話を伺ったとき(※)に教わった、食材がもつ「5つの性質」にも関係があります。5つの性質とは、寒(かん)、涼(りょう)、平(へい)、温(おん)、熱(ねつ)です。カラダを冷やさないためにも、「熱」や「温」の性質をもつ食材を積極的に取り入れていきましょう。
※曹さんに取材した「カラダを内側から温める秘訣」はこちらの記事で詳しく紹介しています。
また、食材の性質に関わらず、加熱に適する食材なら、鍋やスープ、炒め物など、温かいメニューで食べるのがオススメ。曹さんのご家庭では、スープカレーにさまざまな食材を入れて食べるのが定番だそうです。また、油っぽいものも「気血」のめぐりが悪くなるとされるので、できるだけさっぱりとした調理法にするのがよいです。
曹さん「花粉症に限らず、食養生は一度の食事で改善するものではありません。自分のできる範囲で継続的に日々の食事に取り入れてみてくださいね」
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「食」だけでなく、生活リズムを整えて

東洋医学の考え方を取り入れることで、身近な食材も花粉症対策につなげられることがわかりました。
曹さん「今回は食養生について紹介しましたが、睡眠をしっかり取り、バランスのよい食事を心がけることも大切です。春は環境が変わる人も多いかと思います。ストレスは自律神経を乱す原因となるので、自分のカラダが出すサインを見過ごさないようにしてくださいね」