厳しい寒さが続くこの時期に恋しくなる豚汁。野菜やお肉がたくさん入った豚汁は食べごたえがあり、品数を増やせない忙しい日の献立にもピッタリな一品です。しかし、いざ作ろうとすると、「具材が多くて下準備が大変」「皮剥きや切り方が面倒」「そもそも具材はなにを入れるのが正解なんだろう?」と、意外にハードルを感じてしまうことはありませんか?
家庭料理の定番だからこそ、つい「こうあるべき」というマイルールに縛られがちに。今回は豚汁をもっと自由に、もっとおいしく楽しむためのヒントを、「あじふれんず(※)」の総合料理家・大西哲也さんにうかがってきました。
※味の素社に協力してくださっているインフルエンサーさま
インタビューした人
総合料理家・クッキングエンターテイナー
大西哲也さん
調理科学に基づいた「おいしく作れる理由は何か」を、初心者にも分かりやすくロジカルに解説するスタイルで人気を博す。ジャンルを問わない料理の探求やSNSでの発信、調理器具の開発やプロデュースなど多方面で活躍。著書に『COCOCORO大西哲也のドヤ飯』、豚肉に特化した『豚かたまり肉を買ってみました』など。
- 「豚汁」と「味噌汁」は別物?
- プロが伝授!豚汁をおいしく作る4つの極意
- こんなにも自由!驚きのアレンジ術
- 「なぜそうするのか」を理解すれば、もっとおいしくなる!
- 大西さん直伝!豚汁レシピ
- 可能性は無限!アレンジ豚汁レシピ
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「豚汁」と「味噌汁」は別物?

YouTubeチャンネル「COCOCOROチャンネル」やSNSを通じ、調理科学に基づいた「おいしさの根拠」を分かりやすく解説して発信するほか、豚肉のレシピ本も出版されている大西さん 。昨年11月に開催されたイベント「あじ祭り」で、大西さんが豚汁を提供したところ、大盛況となりました。そんな大西さんに、豚汁とはどんな料理か、あらためてお聞きしてみました。
大西さん「一言で言うと、豚汁は『調理の総合力が問われる料理』です。具材の選び方や火の入れ方など、実は考えるポイントがたくさんあって、いわゆる味噌汁とはまったく別な料理だと僕は思っています。
味噌汁と大きく違うのは、さまざまな素材の味で、おいしさを作っていくこと。ひとつひとつの食材をどう扱うかで、できあがりのクオリティが劇的に変わるので、実はすごく自由で奥が深いんです。でも、深く考えずにパッと作っても形になるのが豚汁のいいところ。料理初心者からこだわり派の上級者まで、誰もがそれぞれのレベルで楽しめるのが、最大の魅力ですね」
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プロが伝授!豚汁をおいしく作る4つの極意

豚汁をおいしく作るためのポイントを大西さんにうかがったところ、4つの極意を教えていただきました。
大西さん「1つ目は、『ごぼうにしっかり焼き色をつけること』。料理には五味のバランスが大切です。ごぼうを焼くことで、ごくわずかな心地よい苦味が加わります。このわずかな苦味が隠し味になり、口の中に長い時間味が残るようになる。それを『余韻』や『コク』と感じ、おいしさにつながるんです。
家で作る豚汁の味がなんだかぼやけてしまう……という方は、ぜひ試してみてください。ごぼうに焼き色をつけるだけで、まるでお店のような深みのある一品に変わりますよ」
2つ目の極意は、ごぼう以外の野菜の調理方法について。
大西さん「『野菜を炒めてから調味料を入れる』こと。ごぼうを炒めたあとで、にんじんや大根、こんにゃくなども少し炒めて野菜の水分を抜くとよいでしょう。野菜にはたくさんの水分が含まれているのでそのまま煮汁に入れてしまうと、味が入る余地がなくなってしまいます。炒めて野菜の水分を出しておくことで、味を染み込ませやすくすることができます」

3つ目は、肉を入れるタイミングです。
大西さん「『肉は部位ごとに入れるタイミングを変える』ことです。豚汁には薄切りを使われるほうが多いと思いますが、最初から野菜と一緒に煮込んでしまうのではなく、仕上げの段階で鍋に加えてください。このタイミングで入れることで、豚肉本来のしっとりとした柔らかさとうま味を、一番おいしい状態で引き出すことができますよ」
最後は、大きな鍋で作ること。
大西さん「初心者の方は材料が溢れてしまい、途中で鍋を2つに分けるケースが多いです。そうなると具材や味のバランスが崩れ、レシピ通りに仕上げることが絶望的となります。なので自分の想像よりもずっと大きな鍋で作ることが大切です。
僕のレシピは24cm以上の深型鍋の使用を想定していますが、もし小さな鍋やフライパン兼用の鍋しかお持ちでない場合は、材料を半量にして作るとよいでしょう」

ボリュームのある一品に仕上げたいときは、ブロック肉を入れるのもおすすめです。厚切りの豚バラ肉なら、最初にブロックのまま40分ほど下茹でして柔らかくしてからカットし、その後に野菜と一緒に煮ると角煮みたいに柔らかくなります。
豚肉のどの部位の、どんな状態のものを使うのかによって、調理方法が変わるということもポイントです」
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こんなにも自由!驚きのアレンジ術

豚汁をおいしく作る極意を教えていただきましたが、なにがあれば豚汁になるのでしょうか。「僕は豚肉と野菜が入っている汁物を豚汁だととらえています。なので、アレンジは自在です」と大西さん。豚汁をアレンジする3つのアイデアを教えてもらいました。
1つ目は味付けを変えること。
大西さん「必ずしも味付けは味噌である必要なく、ナンプラーや塩など別の調味料を加えてみるとアレンジが広がります。味噌の代わりにナンプラーとレモングラスでベースを作り、別添えでレモンかライムを添え、仕上げにハーブをかければ、ベトナムのフォーのスープのような仕上がりに。実は世界にも豚汁のような料理はけっこうあって、フランス発祥のポトフもそのひとつ。ほかの国の料理の要素や調味料を取り入れてみると、豚汁のアレンジも自然と広げていけるんじゃないかなと思います」
2つ目は具材を変えること。豚汁にはさまざまな食材が合うのだとか。
大西さん「ズッキーニや冬瓜、トマトも合いますし、大根の代わりにカブを入れるのもおすすめですね。僕個人の考えとしては、豚肉を入れてうま味が強くなる分、少し甘みを足したほうが豚汁の五味のバランスが取れると思っているので、さつまいもを入れるようにしています」
最後の3つ目は、薬味などの仕上げで遊ぶアレンジ。
大西さん「豚汁に七味をかけるのは定番ですが、山椒や柚子胡椒もとてもよく合います。ほかにも、にんにくを足せばラーメンのスープのような味わいになって、また違ったおいしさが楽しめると思いますよ。豚汁は多めに作るという方も多いと思いますが、2日目、3日目に飽きてきたときにもおすすめです。
もっとアレンジするなら冷たい豚汁もあっていいですよね。冷や汁をヒントに、魚の代わりに「ほんだし®」を入れて、最後に豚しゃぶと梅、みょうがをトッピングした冷や豚汁もおいしいですよ」
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「なぜそうするのか」を理解すれば、もっとおいしくなる!
最後に、大西さんから豚汁作りを楽しむためのアドバイスをいただきました。
大西さん「僕が世界各国の料理を研究しているなかでも、豚汁は唯一無二の魅力がある日本料理のひとつだなと思うんです。誰もが知っている料理であるにもかかわらず、料理としてのレベルがものすごく高くて、考える要素がたくさんある。実は、奥深い料理なんですよね。
ひとつひとつの調理の工程が、仕上がりの味にすごく顕著に出やすい料理なので、まずは一度丁寧に作ってみること。手をかけた分だけ必ずおいしくなるので。加えて、ただ手順通り作るというよりも、それぞれの工程を理解することも重要です。なぜごぼうに焼き色をつけるまで炒めるのか。なぜ薄切り肉を最後に入れるのか。すべての工程に、おいしく作るための理由があります。それらを理解すれば、豚汁作りもきっと楽しくなっていくはずです!」
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大西さん直伝!豚汁レシピ
材料(6〜8人分)
- 豚肉(こま切れ・切り落とし)
- 200g
- ごま油
- 5g
- ごぼう
- 1本(150g)
- にんじん
- 1本(150g)
- だいこん
- 1/4本(300g)
- ねぎ
- 1本(100g)
- さつまいも
- 1本(250g)
- こんにゃく
- 1丁(250g)
- A:水
- 1.2L
- A:味噌
- 130g
- A:しょうが(すりおろし)
- 10g
- A:「お塩控えめの・ほんだし®」
- 小さじ1〜1と2/3(3〜5g)
調理手順
- 鍋にごま油を入れ中火で熱し、ささがきにしたごぼうを入れてしっかり焼き色をつける。
- いちょう切りにしただいこん、にんじん、ちぎったこんにゃくを加え、5分ほど炒める。
- 水とさつまいもを入れ、沸騰したら弱火にし、だいこん、にんじんが柔らかくなるまで約10分煮る。
- 豚肉、斜め切りしたねぎ、しょうがを入れて混ぜ、約3分煮る。
- 火を弱め、「お塩控えめの・ほんだし®」を少しずつ(3〜5g)加えて味を整える。
- 最後に味噌を溶き入れ、温めて完成。
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可能性は無限!アレンジ豚汁レシピ
大西さんのお話のなかで登場した、豚汁アレンジのレシピもご紹介します。いつもとは違った豚汁を作りたい日に、ぜひ参考にしてみてくださいね。
塩豚汁
シンプルな味わいで、味の濃いおかずとも相性抜群!
ズッキーニとパプリカのうま塩豚汁
豚肉の代わりにベーコンを使うことで、洋風仕立てに。
ピリ辛納豆豚汁
コチュジャンを加えることで、コクとうま味がアップ!
しょうが風味の具だくさん豚汁
しょうが汁を加えることで、しょうがの華やかな香りが引き立ちます。
