医師が考案!

睡眠お助け
「おやすみそ汁」

健康で豊かな生活をおくる上で大切な睡眠。より良い睡眠のための食事のタイミングや、
摂りたい食材、栄養素を睡眠専門医が解説。
さらに、医師が考案した「おやすみそ汁」のレシピを大公開!

Chapter 01

より良い睡眠のための
食事のポイント

教えてくれたのは

白濱 龍太郎氏
医師(RESM(リズム)新横浜/睡眠・呼吸メディカルケアクリニック院長)

1食事のタイミング

朝食

起床後、時間をあけずに

とると脳と身体がうまく連動して快適な一日の始まりにできます。このとき、太陽の光を浴びて体内時計をリセットするのも忘れずに。リズムを整えることが、より良い睡眠の第一歩。

夕食

就寝時間の四時間前まで

にとることが望ましいです。夕食が胃腸で消化されている状態では、臓器が働いており、交感神経が活発になるのでスムーズに寝付けなくなる、睡眠の質を低下させるなどといった可能性があります。

夕食で最優先に考えるのは、消化の良さ。例えば肉類でハム、ソーセージ、ステーキなどは消化が悪く、長く胃の中にとどまって、睡眠の質を低下させます。こうしたメニューは夜ではなく朝や昼に食べると良いでしょう。

白米、白パン、加糖飲料などの精製された炭水化物が含まれる食材は眠りを浅くするので、夕食には控えめに。

2摂るべき食材、栄養素

トリプトファンを含む食材

  • 魚類
  • 肉類
  • 大豆製品

ビタミンB群を含む食材

  • さつまいも
  • 豚肉
  • バナナ

トリプトファンは人の体内では作ることができない栄養素。睡眠を促す物質の原料になります※1。たんぱく質に含まれ、魚類、肉類ではレバー、牛乳、豆腐・納豆・みそ・醤油などの大豆製品に多く含まれます。

トリプトファンを効率よく機能させるため、“ビタミンB群”を一緒に摂ることが必要とされます。“ビタミンB群”が含まれるさつまいも、豚肉、卵、バナナを食事に取り入れることがオススメ。

温かい食べ物は深部体温という「内臓など、身体の深い部分の体温」を上げることができ、より良い睡眠をサポートします※2。

一方で、同じく深部体温を上げる可能性があるスパイスの効いた食べ物は、就寝直前に取ると、胃もたれや膨張を引き起こして、眠りを妨げてしまいますので注意が必要。

さらに、温かい食べ物は、リラックス効果や満腹感をもたらすと同時に、覚醒状態を維持する働きを抑えより良い睡眠をサポートします※3。

より良い睡眠には食事の見直しがとても重要です。忙しい中でも、例えば缶詰や冷凍食品も使うなど「これならできる」と思える方法で、実践していくことが大事です。

Chapter 02

良い睡眠には
みそ汁がオススメ!?

「より良い睡眠のための食事」を実践したい人へ、睡眠専門医の白濱氏がオススメするのが「みそ汁」です。

みそ汁は、時間がない朝晩にも簡単に作ることができます。温かくだし(うま味)の効いたみそ汁は、起床後や就寝前にも食べやすく、消化・吸収も助けてくれます。

また、温かいみそ汁は深部体温を整えることができ、より良い睡眠へ導きます。

さらに、みそ汁は、みそにトリプトファンを多く含むだけでなく、より良い睡眠のため摂りたい食材を簡単に組み合わせて、おいしく食べることができることもメリットです。

recipe

朝と夜の「おやすみそ汁」レシピ

レシピを考案したのは

河埜 玲子氏
医師(済生会松坂総合病院に勤務)・料理家・キッズ食育マスター)

朝の「おやすみそ汁」

豚ごぼうの豆乳みそ汁

睡眠専門医の白濱氏からのコメント

豆乳にはトリプトファンが含まれており、豚肉は、トリプトファンを効率よく働かせる、ビタミンB6も含まれています。
また、トリプトファンがより良質な睡眠につながる成分へと生成されるまでに一定時間経過した方が良いとされる※1ので、トリプトファンを含んだみそ汁は朝食にとるのが効率的です。
また、豆乳は糖質が少ないので、血糖値の乱高下を引き起こし眠れなくなる心配もないですし、たんぱく質が多いので睡眠時の身体の修復にも役立ちますので、夕食にもオススメです。

医師・料理家の河埜氏からのコメント

優しい味わいと満腹感を与えてくれる『豚ごぼうの豆乳みそ汁』は睡眠を大事にしたい方へピッタリのみそ汁です。

夜の「おやすみそ汁」

ツナじゃがほうれん草のみそ汁

睡眠専門医の白濱氏からのコメント

ほうれん草、じゃがいも、ツナには、トリプトファンが含まれています。
更に、ほうれん草は目の網膜に存在するルテインを含み、ブルーライトや紫外線の有害な刺激を吸収し、目の刺激を緩和しより良い睡眠につながります※4
マグロにはトリプトファンの働きを助ける必要な成分も含まれています※5
じゃがいもにはアミノ酸の一種で脳の働きを抑える効能があるGABAが多く含まれているので、特に夜にとることをオススメします※6。

医師・料理家の河埜氏からのコメント

温かく、満腹感を与えてくれる『ツナじゃがほうれん草のみそ汁』は睡眠を大事にしたい方へピッタリのみそ汁です。

監修

白濱龍太郎氏

医師・医学博士・日本睡眠学会認定医・日本オリンピック委員会強化スタッフ。
筑波大学医学群医学類卒業後、東京医科歯科大学睡眠制御学快眠センター等での臨床経験を 生かし、睡眠、呼吸の悩みを総合的に診断、治療可能な医療機関「RESM(リズム)新横浜/睡眠・呼吸メディカルケアクリニック」を設立。経済産業省海外支援プログラムで海外の医師たちへの睡眠時無呼吸症候群の教育や、丸八真綿睡眠センター所長として、睡眠環境の提案を行うなど幅広く活躍。『誰でも簡単にぐっすり眠れるようになる方法』(アスコム)、『見るだけでぐっすり眠れる深睡眠ブック』(宝島社)ほか、著書、監修書多数。

監修

河埜玲子氏

医師・料理家・キッズ食育マスタートレーナー。7歳の娘を持つ医師。
滋賀医科大学医学部卒業。現在は済生会松坂総合病院にて麻酔科・健診科に勤務。医師として臨床に携わるなかで、身体と心の健康のためには、毎日の食事がいかに大切かを痛感。今、まさに子育て中である自身の経験から、働くママを応援するため料理家として活動をスタート。身近な食材を使った簡単、時短レシピを提案している。ブログや著書『忙しい人のための“一品で”栄養バランスが取れるレシピ―女性医師が教える体と心が喜ぶ食事』(SBクリエイティブ)などでレシピを紹介。

〈資格〉
人間ドック認定医
人間ドック健診情報管理指導士(人間ドックアドバイザー)
麻酔科認定医

《参考文献》
※1
・『J Physiol Anthropol.』 2012 May 22;31:11. doi: 10.1186/1880-6805-31-11.
・『Can breakfast tryptophan and vitamin B6 intake and morning exposure to sunlight promote morning-typology in young children aged 2 to 6 years?』(Nakade M1, Akimitsu O, Wada K, Krejci M, Noji T, Taniwaki N, Takeuchi H, Harada T.)
※2
・『Self-reported sleep duration as a predictor of all-cause mortality』: results from the JACC study, Japan. Sleep 2004;27:51-54(Tamakoshi A, Ohno Y , Group JS.)
・『Association of sleep duration with mortality from cardiovascular disease and other causes for Japanese men and women』: The JACC study. Sleep 2009;32:295-301 (Ikehara S, Iso H, Date C, Kikuchi S, Watanabe Y , Wada Y , Inaba Y , Tamakoshi A.)
・『Sleep duration and mortality according to health status in older adults. J Am Geriatr Soc 2010;58』:1870-1877 (Mesas AE, Lopez-Garcia E, Leon-Munoz LM, Guallar-Castillon P, Rodriguez-Artalejo F.)
・『Self-reported sleep duration, all-cause mortality, cardiovascular mortality and morbidity in Finland. 』Sleep Med 2011;12:215-221(Kronholm E, Laatikainen T, Peltonen M, Sippola R, Partonen T.)
・『Insufficient and excessive amounts of sleep increase the risk of premature death from cardiovascular and other diseases』: the Multiethnic Cohort Study. Prev Med 2013;57:377-385(Kim Y , Wilkens LR, Schembre SM, Henderson BE, Kolonel LN, Goodman MT.)
※3
・『Diet promotes sleep duration and quality』Nutrition Research Volume 32, Issue 5, May 2012, Pages 309-319(Katri Peuhkuri, NoraSihvola, RiittaKorpela)
※4、※5
・『文部科学省 日本食品標準成分表2015年版(七訂) アミノ酸成分表編』
※6
『脳内物質のシステム神経生理学』(有田秀穂著 中外医学社刊 2006年)
『精神の脳科学』(加藤忠史編 東京大学出版会刊 2008年)