「AJINOMOTO PARK」では、社員がレシピ写真のスタイリング・撮影をする場合もありますが、サイト内のテーブル演出の多くはプロのフードスタイリストさんによるもの。レシピやスタイリングのイメージについて、味の素社レシピ担当者と丹念にすり合わせを行い、“私たちが伝えたいこと”を表現するためのお手伝いをお願いしています。
家庭料理らしい“温かみ”や“親しみ”のイメージを大事にしながら、レシピのジャンルや季節、こだわりポイントなどをひとつひとつクリアにして、季節やシーンごとの“おいしそう”を形に。「作ってみたい」「これなら作れそう」と直感的に思っていただけるようなレシピ写真作りを目指しています。
フードスタイリストであり料理家でもある岡本ゆかこさんは、そんな私たちの思いに共感してくださる頼もしいパートナーのおひとりです。レシピ写真の撮影現場にお邪魔して、料理やスタイリングの工夫などについて伺いました。
インタビューした人
フードスタイリスト
岡本ゆかこさん
アフターヌーンティー・ティールームに勤務後、海外の食文化を学びにサンフランシスコ・バークレーへ。フードコーディネーターアシスタントを経てフードスタイリストとして独立。メニュー考案なども手がける。
公式サイト http://www.okamoto-yukako.com
- 季節やシーンごとの“おいしそう”を引き出す工夫
- 料理の情報を伝えるのがレシピ写真の大事な役目
- 「今日作りたい」と思える“家庭料理らしさ”を追求
- 料理を作る人に寄り添ったレシピ写真作りを目指して
- レシピ写真は、メッセージ
01季節やシーンごとの“おいしそう”を引き出す工夫
――岡本さんは撮影する料理をご自分で作っていらっしゃいます。料理を作るときはどんな点に気を付けていらっしゃるのでしょうか。
基本はレシピの指示通りに作っています。ただ、写真を見ただけでどんな食材が入っているかわかるようにしたいので、盛り付けの際には使っているすべての食材の特徴が見えるように気を付けていますね。
たとえば、キャベツと白菜って場所を間違えると同じように見えてしまいます。なので、その野菜であるとわかりやすい部位、今日の「キャベツとあさりの簡単パスタ」でいえばキャベツの青いところを積極的に使っています。
また、写真に目をとめていただくために、季節やシーンごとの“おいしそう”を引き出す工夫をしていますね。春なら爽やかな色、冬なら暗い色やウール素材という具合に、クロスの色や素材にも気を配ります。
――食材を選ぶときのポイントなどはありますか?
たとえば、ピーマンだったら100人いたら100人がパッと思い浮かべられるような形のものを選んでいます。野菜は大きさに個体差があるので、標準的なサイズのものを選ぶことも大切にしていて、実際に店に足を運んで実物を見るよう心がけてもいますね。
02料理の情報を伝えるのがレシピ写真の大事な役目
――レシピ写真のスタイリングのポイントについて教えてください。
普通の料理の写真と違ってレシピサイトの写真では、「おいしそうに見えること」だけでなく「レシピの説明をすること」が大切です。
雰囲気のいいおしゃれな写真なら真俯瞰(真上からの撮影)で撮ればいいのですが、レシピ写真は、器の深さや高さ、料理の分量などがわかりやすいよう、斜め上からの目線になっています。
レシピの説明という点では、たとえば「一口大」とレシピに書いてあっても、どれくらいの大きさなのか、料理をし慣れない人は迷ってしまいがちです。でも、写真があれば「これくらいのサイズに切ればいい」と直感的にわかりますよね。
また、2人分のレシピならお皿の数を2人分用意して、何人分のレシピなのかがわかるように工夫するなど、写真のなかにどれだけの情報を盛り込めるかもいつも気にかけています。
03「今日作りたい」と思える“家庭料理らしさ”を追求
――料理の盛り付けに、レシピサイト特有の工夫があれば教えてください。
レシピサイトでは、綺麗すぎてサンプルみたいに見えちゃうとかえってマイナスになることも。なので、実はちょっと崩すようにしています。
家庭ではそんな綺麗に盛らないでしょう? 「AJINOMOTO PARK」で重視しているのは手軽さとか、作りやすさ。「盛り付けしてみたら、なんとなく綺麗にできた」くらいを目指しています。
――「自分で作っても、写真と同じものができたぞ!」と思えるのが理想ということですね。
そうそう。レシピサイトの写真と自分が作ったものとの間にあまりに隔たりがあったらがっかりしちゃうじゃないですか。
料理を作る人をレシピが裏切ることがないよう、プロだからできる盛り付けと思われないようには気を付けています。
盛り付けは、「料理を7割、お皿が見えている部分を3割」にすると綺麗に見えやすいというのがあって。その割合を逆にして余白を多めにすると、フレンチや懐石料理みたいに、ハレの日のような演出ができます。
今日のパスタでも、もっと品よく盛ることはできるのですが、それだと家庭料理らしいイメージからは遠ざかってしまいます。「今日の夕飯にしよう」って思っていただくことがレシピ写真の目的なので、そこはブレないように。
04料理を作る人に寄り添ったレシピ写真作りを目指して
――岡本さんは、さまざまな媒体でフードスタイリングを手がけていらっしゃいますが、「AJINOMOTO PARK」ではとくにどんな点に留意されていますか?
レシピのイメージが伝わりやすいかどうかを考えるようにしています。和食なのか洋食なのか、温かい料理なのか冷たい料理なのか、お年寄り向けなのか子供向けなのか…。レシピ担当の方と意見交換しながら、一見しただけで特徴がわかるような写真に仕上がるよう常に意識していますね。
たとえば、温かい料理の器を持つ手に厚手の布を添えたり、麻婆豆腐のように男性が作ることも多い料理には黒い器を使って印象が偏らないようにしたり。
また、先ほど料理に合わせて季節感のあるクロスを選ぶお話をしましたが、一年中食べられるものは、あえて一般的なご家庭にあるようなテーブルの上で撮影することがあります。これも、おしゃれに見せるためではなく、「どの季節でも食べられる」というイメージを想起しやすくするためです。
主役はあくまで料理。レシピを見てくださる人の目が真っ先に料理に向かうように、目立つ柄のクロスや器の使用は控えるようにしていますが、中華のときなど、料理のイメージを喚起したいときは、意図して赤い小物を使うこともあります。
――料理を作る人の目線に立とうとする姿勢が貫かれていますね。
はじめて訪れる場所に行くとき、Googleのストリートビューなどを確認して「これで間違ってないな」と確認することがありますよね。レシピが料理を作るための地図だとしたら、レシピ写真はまさに目的地の画像だと思っていて。
その料理にはじめて取り組む人でも、途中で不安になることなく目的地にたどり着ける。レシピ写真がそのお役に立てれば、と思います。
05レシピ写真は、メッセージ
私たち「AJINOMOTO PARK」にとって、レシピ写真はメッセージです。
私たちが大切にしたいのは、毎日の生活に根ざした“等身大のおいしそう”。綺麗なだけでも、SNS映えするだけでもない、その向こうに家族や大切な人の顔が思い浮かぶレシピ写真作りを目指しています。
「AJINOMOTO PARK」のレシピ写真で、そんな私たちの思いをお伝えできればと思っています。
今回、ご紹介したレシピ写真とレシピはこちら。