どなたかのおうちを訪問してキッチンを覗かせてもらったとき、「こんなキッチンだったら料理が楽しくできそうなのに…!」と思ったことはありませんか?
このコーナーでは、そんな素敵なキッチンにお邪魔し、日々のごはん作りを楽しく快適にするためのヒントをご紹介します。9回目にご紹介するのは、スープ作家の有賀薫さんのキッチンです。
インタビューした人
スープ作家
有賀 薫さん
2011年から10年以上にわたり、365日、毎朝欠かさずスープ作りをつづけるスープ作家。10万部をこえるベストセラーとなった『朝10分でできる スープ弁当』(マガジンハウス)など著書多数。
- 料理からコミュニケーションが生まれるキッチンに
- 自然と家族が集うキャンプみたいな食卓
- 片付けが苦手でも、“あこがれキッチン”は作れる
- 家族との時間で「たべる楽しさを、もっと。」
01
料理からコミュニケーションが生まれるキッチンに
「料理は“コミュニケーション”」
そう話すのは、スープ作家の有賀薫さん。
「調理が自体が好き、栄養をとるため、節約をしたいなど、料理をする理由はきっと人それぞれ。
なぜ私は料理をするのだろう。そう考えたとき、私の作った料理を食べる人が喜ぶ顔だったり、一緒に食事を囲む人との会話だったり…。ごはんを通して生まれるコミュニケーション。それこそが私が、料理をする大きな理由なんじゃないかなって思うんです」
そんな有賀さんのご自宅には、料理をする場所がふたつあります。
まず、多くの家庭にあるメインのキッチン。
そして、気になるのがリビングにある“ミングル”。
水道、IHコンロ、食洗機、そしてダイニングテーブルがひとつにまとめられたミニサイズのアイランドキッチンです。
このミングルでは、野菜を蒸したり、魚を焼いたり、シンプルな調理をされているのだそう。
「ほとんどの場合、キッチンに立つ人はひとりですよね。だから、キッチンで私がなにをしているかは家族でもわかりません。そういう状況がつづくと、料理をする人とそうでない人との会話が生まれにくくなってしまう。
そこで、キッチンをリビングに出張させれば、料理を通じてコミュニケーションが自然と生まれるんじゃないかと思ったんです。ミングルで料理をしていると、『なに作っているの?』と私の周りに家族が集まってくるんです」
「“みんなでぐるぐる”囲みながら料理を楽しみたい」、有賀さんのそんな思いが“ミングル”の名前の由来となっているのだそう。
ちなみに、有賀さんのリビングには、かわいらしいガスストーブが。
このガスストーブ、冬場にはやかんでお湯を沸かしたり、焼き芋やパンを焼いたりしているのだとか。「加熱していると、家族が火加減を見てくれて」と有賀さん。ここにも家族が調理に参加する、集う工夫が垣間見えました。
オープンキッチンのあるレストランに行ったときのようなドキドキやわくわくを感じることができる…有賀さんは今、そんなキッチンを大切にされているのだそう。
02
自然と家族が集うキャンプみたいな食卓
有賀さんのおうちには、家族が思わず料理に参加したくなるような仕掛けがあります。
「これまでは、主に私が料理をしていたのですが、ミングルやガスストーブがあると自然とみんなで料理を楽しむようになりました。おうちの中でキャンプを楽しんでいる感覚に近いと思います。
キャンプに行くと自然と火の周りに人が集まるじゃないですか。ミングルやガスストーブがあると、あれと同じことが自宅でも起こるんです。料理を通じてコミュニケーションも増えました」
ガスストーブは冬しか出番がないし、ミングルは料理家の有賀さんのご自宅だからこそある特別なものです。一般的な家庭で真似をできる方法はないか、有賀さんにうかがってみました。
「ホットプレートやお鍋を活用するのがよいと思います。テーブルにホットプレートや鍋を置いて、そこで料理をすれば家族みんなが集まれる場所になるはず。
みんなで火加減を見たり、普段料理担当でない方も参加してくれたりして。野菜とかお肉を切って焼いたり煮たりするだけでも、いつもの食事より特別なものに感じるんです。
最近では小さいサイズのホットプレートやお鍋も出てきたので、気軽に日常づかいできると思います。デザインもおしゃれなものがたくさんあるので、食卓に1台置きっぱなしにしておくのもいいかもしれないですね」
03
片付けが苦手でも、“あこがれキッチン”は作れる
料理が好きで得意な有賀さん。しかし、“片付け”はあまり得意ではないのだそう。
「食事が終わりに近づくと、『そろそろ片付けの時間だ…』と憂鬱になるんです。それくらい片付けは得意ではないですね」
でも、ご自宅のキッチンはすっきり片付けられていてとてもおしゃれです。そこには、片付けが得意ではないからこそ工夫しているポイントがあるんだとか。
1. 汎用性の高い食器をつかう
食器は日常づかいしたくなるデザインかどうかもポイントですが、有賀さんはそれ以上におかずを盛ったりご飯を盛ったりと、1枚のお皿で複数のつかい方ができる機能性を持っているかなども重視しているのだそう。
「朝ごはんを用意するときには、まな板にもなるお皿と小さなナイフをつかっています。この上にバナナとかトーストをぽんって置いて、カットすればそのまま準備完了。わざわざ大きなまな板と包丁を出さなくてもよいので、料理のハードルが下がるんです」
2. デイリーでつかう食器を最小限にする
食器が多ければ多いほど、洗うのもしまうのも大変…。有賀さんは、普段家族でつかう食器はお茶碗はひとり1枚など、必要最低限の枚数に押さえているそうです。
食器をしまう手間が省けるのは、お片付けが苦手な人にはうれしいポイントですね。
「私の場合は、食器を手洗いするのが大変だなと思ったので、食洗機をつかっていますが、料理をするプロセスの中で人それぞれ苦手なこと、やりたくないことって違うじゃないですか。
お皿を洗うことが苦手だったり、食材を切ることが苦手だったり。自分の苦手にあわせて調理器具や家電をそろえるのがよいと思います」
3. 食器や調理器具、調味料も。毎日つかうものは手の届く範囲に
よくつかう調理器具は料理中でもすぐ取り出せる場所に置いたり、食器や調味料はダイニングテーブルに座っていてもすぐ取れるところに置いたりと、家族が料理や片付けに参加しやすいキッチンをつくるのもひとつのポイント!
有賀さんの場合は、手の届く範囲に調理器具を置いたり、ダイニングテーブルの引き出しに調味料を入れたりしているそう。
「冷蔵庫のつかい方でいえば、手前と奥をつかい分けるようにしています。
賞味期限が短いものは忘れてしまいやすいので手前に置いて、比較的長期間保存できる食材や調味料を奥に置いているんです。『早く食べたほうがいいなと思ったものは、基本的に手前に…』がうちのルールになっています」
04
家族との時間で「たべる楽しさを、もっと。」
料理をすることで生まれるコミュニケーションが、家族や友人との食べる時間をもっと楽しいものにしてくれる…そんな想いを抱いている有賀さん。
最後に、料理を楽しみつづけることのコツを尋ねてみると、「今も探している最中です(笑)」と、にこやかに答えてくれました。
「料理って毎日するものだから、楽しい!と思いながらつづけるのって難しいですよね。だからこそ、料理にコミュニケーションを見出せるといいのかなと思います」
一緒にごはんを食べる人とコミュニケーションをとりながら調理を楽しめるキッチンがあれば、さらにおいしく楽しい食卓をつくることができそう♪
家族が思わず集まりたくなるようなキッチンをつくる小さな心がけが、料理を楽しくすることにもつながっているようでした。