来たる「パリ2024オリンピック」に向けて、食の面から日本代表選手団などの「TEAM JAPAN」を支援する味の素社。
今回は、栄養プログラム「勝ち飯®」を通して、柔道選手や、新競技に採用されたブレイキン(ブレイクダンス)選手をサポートしている管理栄養士の寺田さんにお話を聞きました。「勝ち飯®」の取り組みから、家庭でも実践できるポイントを探ります!
インタビューした人
グローバルコミュニケーション部 管理栄養士
寺田 智子さん
幼少期から体操競技に取り組む中で栄養の大切さを実感し、大学・大学院では栄養学・食品機能化学を専攻。入社後は研究所でアミノバイタル®の製品開発を経験後、現在はビクトリープロジェクト®にて活動。ビクトリープロジェクト®では、競技担当メンバーとともに選手の目標やありたい姿に寄り添った栄養戦略・目的に合わせた献立提案を実施している。
- 食を通じた縁の下の力持ちとして、アスリートを支援
- からだだけでなく「こころの健康」を支えることも大切
- エネルギー補給には「パワーボール®」を上手に活用
- 日常のお困り事も「勝ち飯®」アプローチで解決!
- 「ぼんやり健康」から卒業!「ありたい姿」を思い浮かべて
01
食を通じた縁の下の力持ちとして、アスリートを支援
──日本代表選手や、その候補選手を対象に、食と栄養のサポートをおこなう上で大事にしていることを教えてください!
寺田さん:競技ごとに様々な特性があるのでそれに合わせたサポートが必要ですし、同じ競技でもさまざまな選手がいますから、一人ひとりが達成したい目標や、アスリートとしての「ありたい姿」まで深く理解して、寄り添うよう心がけています。
この活動を「ビクトリープロジェクト®」と呼んでいて、2003年からスタートした、アミノ酸のはたらきを活用してコンディショニングに貢献するサポート活動です。
──栄養面で選手に対して具体的にどのようにアプローチされていますか?
寺田さん:私たちは「勝ち飯®」と呼んでいますが、「がんばる人のためのチカラになるご飯」で栄養サポートしています。大事にしているのは「何を食べるか」ではなく「何のために食べるか」です。
例として、オリンピックでメダルを取ることを目標に、日々トレーニングに励む高校生を挙げます。毎日満足のいく練習ができているかと聞くと、そうではないようで、「週の後半になると疲れてクタクタになる」と言うんです。食事メニューを聞くと、練習量に対してエネルギー摂取量が不足していることが分かって。週の後半にも力を発揮できるように食のアドバイスをしました。
02
からだだけでなく「こころの健康」を支えることも大切
──「パリ2024オリンピック」に向けてサポートを行っている「柔道」と「ブレイキン」、それぞれの競技特性や、どんなサポートをされているのか教えてください!ではまず柔道から。
寺田さん:柔道には体重別の「階級」があるので、試合前日の計量をクリアした上でいかに良い状態で試合を迎えるかがポイントです。そのために、減量や回復プランをしっかり立てることが重要です。柔道ならパワーで押す「速効型」や、寝技が得意な「持久型」など、選手ごとの「ありたい姿」も考慮したからだづくりをサポートします。
試合前日の計量に向けて、体重を減らす為にやみくもに食事量を減らすと、筋肉が落ちパフォーマンスも落ちがちです。ですから、減量期にはトレーニングの前後などにアミノ酸を積極的に摂取し、より良いコンディションを保ちながら体重をコントロールする食事を提案します。
減量を終えた回復期は、計量後から翌日の試合までのわずかな時間ですが、より力を発揮できるように、エネルギー源となる炭水化物とそれらを活かすためのビタミン類をしっかり摂ってもらうようにしています。
──柔道という競技に関わらず、プレッシャーや緊張感がある現場で、選手が食欲不振に陥ることもあると思います。そういう時はどうしていますか?
寺田さん:工夫の一つとして「ほんだし®」をお湯に溶かして作る「だし湯」を活用していますね。白湯よりもほんのりと味がついただし湯を食事の前に飲んでもらうと、気持ちが和らいで「これからご飯を食べるぞ!」という気持ちも湧きやすいんです。
他にも、食事にはこころの満足感も伴いますから、選手のご家族から好物のレシピをいただいて、再現やアレンジをして、リラックスしながら楽しく食べてもらえるように心がけています。
あとは「『勝ち飯®』会」と題して、選手たちを募って食卓を囲み、みんなでワイワイ食事をとる機会も設けています。食事と一緒に会話を楽しんだり、身近な悩みを話し合ったりすると、みなさんも、なんだか元気になったりしませんか?栄養などの機能的なサポートだけでなく、食が持つ「こころの健康」に繋がるサポートも意識しています。
03
エネルギー補給には「パワーボール®」を上手に活用
──では、ブレイキンにはどういった特徴がありますか?
寺田さん:一日に何度も「バトル」と呼ばれる試合を重ねるのが特徴です。長時間にわたって、繰り返し動き続ける必要があるため、エネルギー切れを起こさないようにしようと、選手と会話を重ねています。
エネルギー切れを起こさないようにといっても、ブレイキンはとても繊細なスポーツで、からだをひねったり揺らしたりする動きも多く、少しの食べ過ぎや胃の不快感がダンスの精度に影響しかねません。そこで「パワーボール®」を、メインの食事とは別にエネルギー補給用の「補食」という扱いで、手に取れるタイミングで食べてもらうように準備しています。
──「パワーボール®」とは何でしょう?
寺田さん:ご飯200gに対して「ほんだし®」を小さじ山盛り1入れて混ぜ合わせ、50gずつに小分けにしたおにぎりのことです。試合当日は緊張してなかなか喉を通りづらくなりますが、「パワーボール®」だと「ほんだし®」のうま味を活かしたやさしい味わいで食べやすく、小分けなので量の調整もしやすいので選手にも好評なんです。
04
日常のお困り事も「勝ち飯®」アプローチで解決!
──アスリートのための「勝ち飯®」を、私たちの食生活において取り入れることはできるのでしょうか?
寺田さん:もちろん、取り入れていただけます!その場合、食事を変える、ということから考えるのではなく、まずは「免疫力を上げたい」「夏バテしたくない」といった、日々の小さなお困りごとから考えてみてはいかがでしょうか。
私の経験から言うと、以前まで朝ごはんをきちんと食べずに出社していたんですね。そうすると、午前中の集中力が続かなくて、すぐに休憩したくなっちゃうんですよ。「これはエネルギーが足りていないからだ」と気づき、そこから意識的に朝食を食べるようになりました。
何を食べるか迷ったら、からだ作りに欠かせない「たんぱく質」、からだを整える働きがある「野菜」、消化吸収を助けるうま味のきいた「汁物」を献立に取り入れるといいと思います。味噌汁など、汁物は具材を充実させれば、手っ取り早くすべてを摂取できるのでオススメです!
──ほかに、日々の食事に取り入れられる考え方やコツはありますか?
寺田さん:仕事や、テストなど様々な場面で「ここぞ!」という力を発揮したいときはお腹に食べ物が残っていない状態が望ましいです。その時間より3、4時間前に食事を摂ることをオススメします。
ご飯を食べるのにまとまった時間が取れない方や、長時間勉強に集中する受験生には「ちょこちょこ食べ」と「ちびちび飲み」と言って、先ほどお伝えした「補食」でエネルギーを繋ぐといいと思います。ご自身に合った取り入れ方で、ちょうどいいところから始めてみてくださいね。
05
「ぼんやり健康」から卒業!「ありたい姿」を思い浮かべて
味の素社はアミノ酸の研究とその成果をもとに、オリンピック選手を栄養面からサポートしてきました。それらも全ては、選手一人ひとりの「ありたい姿」を支えたい、という思いがあってのこと。
誰であっても、健康に越したことはありません。でも、「なぜ健康でいたいのか?」と問われると、すんなり答えられないかも……。「勝ち飯®」が大切にする問いかけは、アスリートならずとも、一度は見つめてみる価値のあるもののように思います
みなさんも「ありたい姿」を叶えるために、目的から食事を考えてみませんか?
さてさて、「勝ち飯®」についてのお話、次回に続きます。季節柄のお悩みでもある「夏バテ対策」を例にとって、具体的な献立や生活に取り入れるヒントを、さらに聞いていきます。近日公開しますので、どうぞお楽しみに!