Introduction:
せわしない日々の中、なかなか自由な時間を捻出できずにいる現代人。
より「幸福」であると感じられるライフスタイルを実現するために 見直しが求められるのが、時間の使い方です。
そこで今回、時間の使い方を客観視し、生活の質の向上のきっかけにしようと、予防医学研究者である石川善樹さんが味の素社員2名のタイムスケジュールをチェック!
自分のために時間を使うことの大切さを「ウェルビーイング(Well-being)」の観点から考察します。
Profile:
石川善樹(写真左) Yoshiki Ishikawa
予防医学研究者・医学博士
東京大学医学部健康科学科卒業後、米国ハーバード大学公衆衛生大学院修了。予防医学研究者、医学博士として、「人がよりよく生きる(ウェルビーイング)とはなにか」をテーマに研究を行う。
髙井 悠紀子さん(写真右上) Yukiko Takai
2007年4月入社。営業戦略部で「ラブベジ®」など食と健康の課題解決に向けた横断施策を担当。二児(小学生、保育園児)の母。趣味はスキューバダイビングとヨガ。
内山 翔貴さん(写真右下) Shoki Uchiyama
調味料事業部
2020年入社。オウンドメディアグループに着任し、「AJINOMOTO PARK」やSNSを通じて、みなさまとともに食の楽しさを発見・共有できたらと日々・奮闘中。最近は料理を頑張っています。
ウェルビーイングとは
「自分がよいと思っている状態」のこと
自分にとってよい状態を考えながら働くことが大切
「ウェルビーイングとは『自分がよいと思っている状態』のことです。ただし、たとえばホテルのスイートルームだって、何日かは心地よいかもしれないけれど、毎日だと飽きてきます。よい状態というのは日々変わっていくわけです」
「今の自分にとってよい状態とはなんだろう、と常に考えながら働いていくことが大切ですね。終身雇用の原則も崩れてきている中、会社ももちろん、会社の外にも目を向け、自分にとってのウェルビーイングを考えてみることも必要じゃないでしょうか」
ついついがんばりすぎてしまう
髙井悠紀子さんの場合
やりたいことを優先する「ポジティブスケジューリング」を
味の素社員のおふたりに書いていただいた平均的な1週間のタイムスケジュールを見ながら、石川先生にウェルビーイング向上の観点からコメントをいただきます。まずは営業部門の髙井悠紀子さんから。
ある週のタイムスケジュール(高井さんの場合)
石川善樹先生
(以下石川先生)
まず感じたのは、全部を自分でやりすぎだということです。仕事と家族を優先しすぎて、自分の時間が後回しになっていることが気になります。ご本人の気持ち次第ではあると思いますが。
髙井悠紀子さん
(以下髙井さん)
週末に夫に子どもの対応を任せて、ヨガや聞きたいセミナーに行ったりすることはあります。ただ、「平日は自分でやりすぎているかも…」と思うことはあり、たまに歪みがきてしまうこともありますね。
石川先生
よくある「スーパーママ症候群」かもしれません。全部がんばっちゃう人ですね。
髙井さん
<子どもたちが『鬼滅の刃』にはまっていて、長女と次女がそれぞれ自分たちは「○○の呼吸の使い手!」と遊んでいるのですが、「ママはがんばりやさんの呼吸だね」と。子どもたちのやさしさにこっそり泣きました。
石川先生
なぜそうなってしまうかというと、やるべきことでスケジュールが全部埋まっているからなんです。やりたいことを優先することを「ポジティブスケジューリング」といいますが、自分がやりたいことをまず予定に入れて、残った時間でやるべきことをしたらいいんですよ。
先ほど歪みが出るとおっしゃっていましたが、どういうときに出るんですか。
髙井さん
自分のやりたいことをする日までが遠いときですね。たとえば、「久々に友人と飲みに行く」と決めてもそれがかなり先の予定だと、日々の小さなイライラがたまってしまうこともあります。
数ヶ月単位で見ると高いウェルビーイング
石川先生
土曜日に子供の習い事対応をされていますけれども、だんなさんと一緒にやるのか、週ごとに交代でやってもいいわけじゃないですか。話してみたことはありますか?
髙井さん
話はしていますし、やれるところはやってもらっていますが、彼も仕事柄そうとう忙しいんですよね…。
石川先生
髙井さんも、ものすごく忙しいですよね。家事も入れると、朝の7時から平日は21時半ぐらいまで、ずっと働いているじゃないですか。
髙井さん
そういう意味では、夫と話し合って、土日祝日のごはんは夫が担当すると決めたんです。
石川先生
いいですね。あとはこまめに平日にも自分の楽しみの時間を設けられるといいと思います。
髙井さん
今は朝と夜に好きなことをやっていますね。
石川先生
それは睡眠時間を削って入れているという言い方もできるんですよ。それでよいと髙井さんが思うだったらいいんです。ただ、歪みがたまに出ているのだとしたら、検討してみてもいいかもしれませんね。
髙井さん
数ヶ月や半年、1年といったもう少し長いスパンであれば、「このときにこれをしたい!」と、家族間の調整はやっています。ですから、私としては全部を我慢しているとは思っていないですね。
石川先生
数ヶ月単位でウェルビーイングな感じだと思うのであれば、それはそれでよいリズムなのかもしれないですね。
仕事に手応えを感じたい
内山翔貴さんの場合
オンとオフの気持ちの切り替えがうまくできない
次は、調味料事業部の内山翔貴さんのタイムスケジュールについて見ていきましょう。
ある週のタイムスケジュール(内山さんの場合)
内山翔貴さん
(以下内山さん)
私は、日々そんなに不満があるわけじゃないんですけれど、コロナ禍で在宅勤務が多くなって、気持ちのリフレッシュができていないなと感じますね。
石川先生
どんなお仕事なのですか。
内山さん
基本的にはずっとパソコンに向かっています。転職してきてまだ3ヶ月ほどなので仕事について考えてしまうことが多くて。気持ちを切り替えたいのですがうまくいっていないんです。
石川先生
気持ちを切り替えるためにどういうことがあるといいと思いますか?
内山さん
友人と会う機会があるといいですね。
石川先生
なるほど、コロナでなかなか難しい面もあるかと思いますが、うまく予定に組み込んでいきたいですね。
起床時間を揃えて時差ボケを防ごう
石川先生
私が気になるのは、寝る直前にお風呂に入っていらっしゃることです。体温が上がるので眠りづらいんじゃないですか?結果、睡眠の質が悪くなって、土日の寝だめにつながっていると思うんです。平日も休日も、起床時間はプラスマイナス1時間以内には揃えたいところです。
内山さん
確かに、週はじめの朝は、起きるといつもと違う眠気があります。
石川先生
それは社会的時差ボケといわれる現象です。ヒトの体内リズムは、起きる時間がずれると生じるんです。平日も休日も同じような時間に起きて、それでも眠い場合は昼寝でカバーしたほうがいいですね。
内山さん
確かに、夕方になると眠くなり、パフォーマンスが落ちてくると感じることもあります。
石川先生
漫画を読まずに寝ればいいんじゃないでしょうか。おそらく新しい仕事をはじめたばかりで、日中の仕事にまだ手ごたえを感じられていないというのが問題の根本にあるんですよ。だから、夜の時間を充実させて、リフレッシュしたくなる。
石川先生
仕事の終わりをどうやって迎えていますか?
内山さん
時間がきたら「今日はもういったんやめておこう」と思って終わります。
石川先生
なるほど、それはもしかしたら改善できるかもですね。時間が来たからといって終わらせると、脳内ではやり残した仕事がいつまでも忘れられず、ずっと残ってしまいます。
内山さん
どうすればいいんでしょうか?
石川先生
簡単なのは、明日どう仕事をはじめるのかを書き出してから終わるという方法です。すると、脳は終わったと認識してくれるんですよ。
内山さん
すごく勉強になります。
石川先生
内山さんの場合、本当にやりたいことは、仕事にちゃんと手応えを感じることだと感じました。
「ハイライト」を意識した
タイムマネジメントを
やりたいことを優先することがウェルビーイングを向上させる
今回教えていただいたことは、「やりたいことを真っ先にスケジュールに入れる」という、とてもシンプルなこと。石川先生は「あなたの人生に『ハイライト』はちゃんとありますか?」と問いかけます。
「『ハイライト/ローライト』という言葉があります。『ローライト』というのは最低限のこと。『ハイライト』というのは、ここまでできたらいいなということ。ほとんどの人のスケジュールは『ローライト』=やるべきことで埋まっているんです。けれど、『ハイライト』=やりたいことを優先することがウェルビーイングの向上につながります」
忙しくて自分の時間が取れないと思う人は、「ハイライト」=やりたいことをきちんと意識することからはじめて、優先的にスケジュールに入れてタイムマネジメントをおこなってみてはいかがでしょうか。