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写真家ヤンス・キムさんが感じる「#私のおいしい瞬間」

写真家ヤンス・キムさんが感じる「#私のおいしい瞬間」

2022/09/22

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みなさんが「おいしい」と感じる瞬間はどんな時ですか?

おいしいものを食べている時はもちろん、お店で食材を選ぶときや料理をしているときの音、香りなど、日々の暮らしで「ふっ」と感じるおいしいシーン。この企画では、そんなおいしいを感じる場面を「#私のおいしい瞬間」と題してクリエイターのみなさんにうかがいます!

第1回目のクリエーターは、写真家のヤンス・キムさん。広告やWEB、雑誌を中心に写真家として活躍しながらプライベートでは様々な料理を作られているそう。お気に入りの一品を撮りながら見えてきた、 ヤンスさんにとっての「#私のおいしい瞬間」を教えてもらいました。

インタビューした人

写真家

ヤンス・キムさん

1992年奈良県生まれ。東京都在住。透明感のある世界観で静止画・動画問わず、広告、WEB、雑誌を中心に活動中。
WEBサイト

  1. 写真家が考える「おいしい瞬間」
  2. “音”が聞こえてくる写真を目指す
  3. おいしい写真を撮るには、まず料理をしてみること。
  4. 「AJINOMOTO PARK」編集部のあとがき

01
写真家が考える「おいしい瞬間」

「僕が料理を撮る時の視点っていうのは、小さい頃に両親が料理を作っているのを見ていた時の視点なんです」

そう話すヤンスさんは、父、母、姉、妹の5人家族。両親が共働きで忙しかったこともあり、小さい頃からよくお料理をされていたのだとか。

「はじめて作った料理は目玉焼きでした。その当時、小学1年生の姉と、保育園児の僕、小さい妹の3人で台所に立ってよく料理していたのを思い出します。

小さい頃から、人が料理をしている風景を見るのが好きです。両親が料理をしている風景をよく覚えているせいか、僕の写真は“子どもがのぞいているみたいな写真だね”とよく言われます」

今回、ヤンスさんが 「#私のおいしい瞬間」に選んだ料理は 、彩り豊かな「夏野菜のぶっかけそうめん」。仕事を一緒にすることが多い料理家さんが、はじめて会った時に作っていた料理なんだそう。

「料理家さんが作ってくださった時のキラキラ感が忘れられなくて、自分でも作るようになりました。これからの季節にもぴったりですし、色とりどりの野菜が目にも鮮やかな料理なので、この記事を見てくれる人にも元気になってもらえたらと思いチョイスしました。今回は、おいしい瞬間を逃さない為に、この料理を教えてくださった料理家さんに調理をお願いして、撮影をしました」

用意した野菜は、かぼちゃ、パプリカ、ズッキーニ、ししとうがらし、さやいんげん、なすと、色鮮やかなラインナップです。

02
料理に込められた、作り手の気持ちを写真にのせる

「僕が料理を撮影する時に大切にしていることとして、“おいしそうに撮る”っていうのは絶対なんですが、その上で作っている方の気持ちも写真にのせたいと思っています。ひとつひとつの所作やちょっとしたひと手間から感じられる、作ってくれた方の感情や優しさも含めた、トータルの“おいしい”をちゃんと残せるようにしたいんです」

そう話すヤンスさんの写真は、完成した料理写真だけではなく、調理中の写真も多く見られます。

「作っている途中とか、切っているところとかの所作も好きです。料理って、プロセスそのものに美しさとか尊さがたくさんあると思うんです。まな板を洗っている写真も撮影していますが、料理って洗うとか片付けるとかも含めた総合的なパワーの結晶なので、こういったシーンも“おいしい”に向かっていると思います」

ラップで包んだ小皿の中で出番を待つ薬味にもフォーカス。食材が乾かないためのほんのひと手間も尊いと感じると話すヤンスさん。

03
“音”が聞こえてくる写真を目指す

■「みんなが思い出す音」を料理の中から見つける

切りそろえた野菜を熱々の油に投入。キラキラと跳ねる油が美しいです。

「写真を撮りながらよく思うのは、写真を見る方にもこの音が聞こえたらいいなと。映像だったら音が入るので伝えられるんですが、写真に音は入れられない。だから料理を撮る時は、音が聞こえる写真っていうのをいつも目指しています」

「食材が油とかお湯に半分入っている、ちょっと中途半端な瞬間もなんだかおいしそうで好きなんです。この写真のように、無音からジュワっと音が始まる瞬間みたいに、なんとなくみんなが思い出す音ってあるじゃないですか。無意識下にある音のイメージを見る人にどうやって呼び覚ますか。僕自身、よく料理をするのでそういうタイミングに目が行きますね」

■子どもの目線で料理に近づく

揚げた野菜をバットにのせてひと休み。野菜たちはまるで陶器のように美しい光沢感をまとっています。食材の並べ方にも料理家さんの丁寧な所作が伝わってきます。

「この写真は、かぼちゃが半分だけつゆに浸かっている瞬間なんですが、タイミング的に絶妙で、撮れると思ってなかったお気に入りの一枚です。

あと、私の写真は被写体との距離が近いのが特長なんです。“子どもがのぞているみたい”って言われる理由はこれなんだろうなって思います。子どもは親が料理をする手元で見ているから、1番料理に近いところにいる。その距離感は大事にしています」

特製のつゆはポン酢しょうゆと水を半々で割ったシンプルなもの。一晩おくとじっくり味がしみ込むそうなのですが、20分くらいでもおいしく仕上がるそう。

ちょっと暑くなってきた季節の土曜のお昼、旬の夏野菜を楽しめ、テンションの上がる一皿が食べたい。そんな時をイメージして撮影したとお話しされていました。

04
おいしい写真を撮るには、まず料理をしてみること。

つゆをかけて薬味を添えて、完成!さっぱりおいしい「夏野菜のぶっかけそうめん」。

食べている途中もパシャリ。食べる順番やスピードにもその人らしさが表れると話すヤンスさん。

「作る側の気持ちや調理器具の使い方・タイミングがわかれば、撮る時にそれらを意識的にくみ取ることができる。より“おいしい”瞬間を捉えることができるかもしれない。

この気持ちを忘れずに、写真を見た方もそこで一緒に料理をしている気分になれるような、そんな写真をこれからも撮れたらと思っています」

05
「AJINOMOTO PARK」編集部のあとがき

「トントントン」「ジュワッ」「チャポン」。まるでその場にいるかの様な料理の“音”がヤンスさんの写真からは聞こえてきました。

味だけじゃない、見た目からもおいしいは作れる。そして、完成した料理から、調理された方の気づかいやパワーも感じることができると、ヤンスさんのお話を聞いて思いました。

料理を作らなきゃ!と焦ってしまいがちな毎日ですが、少し手を止めて、食材の色合いや料理中の何気ない音に意識を向けると、いつもの料理がいつもとは違って見えてくるかもしれません。

そんな、食の楽しさ「たべる楽しさを、もっと。」をこれからもお届けしたいと改めて感じました。

みなさんが、おいしいと感じる瞬間はどんな時ですか?

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